法人の資金調達方法の情報をお探しの方向け。
法人の資金調達方法というと、真っ先に思い浮かぶのは公的融資(政府系金融機関)や銀行融資だと思いますが、金融機関かから融資を受ける以外にも様々な資金調達方法があります。
この記事では、法人の資金調達方法の選択肢をまとめて紹介します。
法人の資金調達方法は大きく3種類

法人の資金調達方法はいろいろありますが、大きく3つに大別されます。
- 負債で資金調達(デッド・ファイナンス)
- 資本で資金調達(エクイティ・ファイナンス)
- 資産を現金化して資金調達(アセット・ファイナンス)
上記のとおりです。
負債で資金調達(デッド・ファイナンス)
負債で資金調達する(デッド・ファイナンス)は、公的融資や銀行融資、社債発行等といった返済義務のあるお金を借りて資金調達する方法です。
資本で資金調達(エクイティ・ファイナンス)
資本で資金調達する(エクイティ・ファイナンス)は、株式を発行することで出資を受ける資金調達方法です。
出資なので返済義務が無いというメリットがある一方、出資比率によっては経営に関与されたり、経営権を握られて経営の自由度が下がるというデメリットもあります。
資産を現金化して資金調達(アセット・ファイナンス)
資産で資金調達する(アセット・ファイナンス)は、会社の持つ資産を売却し、現金化することで資金調達する方法です。
会社の信用力が低下していても資産性があれば資金調達可能です。
法人の資金調達:負債で調達(デッド・ファイナンス)

法人の資金調達方法の1つである負債で調達(デッド・ファイナンス)する方法は8つあります。
- 公的融資(政府系金融機関)
- 銀行融資
- 手形割引
- ビジネスローン
- 売掛金担保融資
- 契約者貸付(保険)
- 少人数私募債
- 証券担保融資
上記のとおりです。
公的融資(政府系金融機関)
公的融資とは政府系金融機関から融資を受けて資金調達する方法のことで、主に2つあります。
- 日本政策金融公庫
- 商工中金
上記のとおりです。
日本政策金融公庫
政府系金融機関の1つである日本政策金融公庫は、民間の金融機関では敬遠されがちな創業融資や、業歴が浅い企業への融資も積極的に検討してくれる金融機関です。
原則、無担保・無保証で、金利も2%~3%台で利用できる場合が殆どなので、積極的に利用したい金融機関といえます。
参考リンク:融資制度一覧から探す|日本政策金融公庫
商工中金
商工中金(株式会社商工中央金庫)は、日本政府と民間の共同出資で運営されている政府系金融機関です。
日本政策金融公庫と違い、創業融資や業歴が浅い企業への融資は行っていませんが、事業実績があれば利用できます。
参考リンク:法人・個人事業主のお客さま | 商工中金
銀行融資
銀行融資は低金利で融資を受けることができ、調達可能な金額も最も多いため、積極的に利用したい金融機関です。
ただし、公的融資と比較すると審査は厳し目なので、業歴が浅いうちは公的融資と併用して利用する場合が殆どです。
ちなみに、一口に「銀行融資」といっても、下記2通りの方法があります。
- プロパー融資
- 信用保証協会の保証付融資
上記のとおりです。
プロパー融資
銀行が直接融資を行うことを「プロパー融資」といい、銀行が貸し倒れリスクを負うため、審査が最も厳しい融資となります。
業歴が浅いうちはプロパー融資を利用する事はまず不可能なので、銀行融資を利用する場合は、次の項目で解説する保証付融資を利用して返済実績を作り、徐々にプロパー融資を狙うというのが一般的な流れとなります。
ちなみに、プロパー融資の詳しい解説は「銀行融資の種類「プロパー融資」とは?特徴やメリット・デメリットを解説【基礎知識】」をどうぞ。
信用保証協会の保証付融資
中小企業が銀行融資を受ける場合、基本的に信用保証協会の保証を付けて、融資してもらうことになります。
信用保証協会が借入の保証人になると、融資先がデフォルト(債務不履行)に陥っても、銀行は信用保証協会から肩代わり弁済を受けることができるため、銀行はほとんど損をしない仕組みになっているのです。
詳しくは「銀行融資の種類「信用保証協会の保証付融資」とは?特徴や保証を受ける要件を解説【基礎知識】」をどうぞ。
手形割引
手形割引は、受取手形を担保に銀行から融資を受ける方法です。
手形割引の法的性質は手形の売買という扱いになりますが、振出人が不渡りを起こしたら割引依頼人に買い戻し義務が発生するので、実態としては、手形を担保にした借入ということになります。
詳しくは「銀行融資の種類「手形割引(商業手形割引)」とは?特徴や注意点を解説」をどうぞ。
ビジネスローン
ビジネスローンは、事業者を対象とした無担保ローンのことをいいます。
ビジネスローンは銀行が扱っている「銀行ビジネスローン」とノンバンクが扱っている「ノンバンクビジネスローン」の2種類あります。
- 銀行ビジネスローン
- ノンバンクビジネスローン
上記のとおりです。
銀行ビジネスローン
銀行ビジネスローンは、銀行が中小企業や個人事業主向けに開発した無担保ローンサービスのことを言います。
公的融資や一般的な銀行融資と比較すると金利は高めですが、銀行のように人が融資審査を行うのではなく、スコアリングシステムと呼ばれるシステムで自動的に融資の可否を判別するため、一般的な融資と比較すると審査は早いです。
とはいえ、最終的な判断は人が判断するため、銀行融資よりは審査が通りやすいものの、ノンバンクビジネスローンと比較すると審査は厳しいです。
詳しくは「銀行融資の種類「銀行ビジネスローン」とは?特徴や利用する際の注意点を解説」をどうぞ。
ノンバンクビジネスローン
ノンバンクビジネスローンは、銀行ビジネスローンと比較すると若干金利が高めに設定されてはいるものの、融資の可否はスコアリングシステムで判別しているため、銀行ビジネスローンと比較すると審査は通りやすくなっています。
また、ノンバンクビジネスローンの多くはカードローンタイプなので、提携金融機関やコンビニのATMで借入限度額の範囲内で自由に引き出しが可能できるため、利便性も高いです。
詳しくは「【保存版】ビジネスローンの特徴や利用時の注意点を徹底解説」をどうぞ。
ABL(流動資産担保融資)
ABL(流動資産担保融資)は、売掛金や在庫などの流動資産を担保に融資を受ける方法です。
詳しくは以下の記事をどうぞ。
生命保険の契約者貸付制度
生命保険の契約者貸付制度を利用するには、保険に加入していることが前提ではありますが、生命保険の加入者であれば契約者貸付制度で資金調達することができます。
金利は保険会社によって異なりますが、概ね2%〜8%ぐらいと良心的で、しかも即日融資に対応している場合が殆どなので、使い勝手は良いと思います。
少人数私募債
少人数私募債は社債の一種で、縁故者に社債を引き受けてもらうことで直接的に資金調達する方法です。
大企業が発行する社債と異なり、社債発行に必要な手続きの一部が免除されいるため、短期間で低コストで簡単に発行できます。
詳しくは「【資金調達】少人数私募債の特徴や発行要件、メリット・デメリットを徹底解説」をどうぞ。
証券担保融資
証券担保融資は、企業が投資目的で保有している上場企業の株式を担保に融資を受ける方法です。
例えば、1億の時価評価の株式を保有している場合、時価評価の60%~70%を上限に融資を受けることができます。
借入金利は、担保となる株式の銘柄や業績、流動性に応じて個別に決められるため、1.8%~14.0%の範囲内で設定されます(東証1部上場の株式だと金利が低くなる場合が殆どです)。
担保維持率が低下すると追証が発生するリスクあり
担保となる株券の担保維持率が低下すると、追証(追加保証金)が発生するリスクがあります。
上場株式は常に価格変動するため、相場の下落で時価評価額が下ると、追加で保証金を差し出さなければならなくなるので注意が必要です。
法人の資金調達:資本で調達(エクイティ・ファイナンス)

資本で調達(エクイティ・ファイナンス)する方法は6つあります。
- 第三者割当増資
- ベンチャーキャピタル
- エンジェル投資家(個人投資家)からの出資
- 中小企業ファンド
- クラウドファンディング
- M&A(株式・事業譲渡)
上記のとおりです。
第三者割当増資
第三者割当増資は、新株を発行し、第三者に株を買い取ってもらう事で資金調達する方法です。
株式で資金調達するので返済義務はありませんが、経営に関与されるため、経営の自由度は下がります。
また、経営者の出資比率によっては経営権を失う可能性があることに留意が必要です。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業やスタートアップ企業など、将来有望な未上場企業に対して出資を行う投資会社の事をいいます。未上場時に投資を行うことで、投資先企業が将来的に大きく成長したり、上場した後に株式を売却することで、キャピタルゲイン(出資時の投資額と、株式売却額の差額)を得る事を目的としています。
ベンチャーキャピタルの投資対象は将来性の高い企業や、将来性の高い市場に出資するケースがほとんどなので、狭き門ではありますが、銀行融資と違って返済義務のない資金を調達できるため、手元資金に余裕がないベンチャー企業やスタートアップ企業にとって、頼もしい存在だといえます。
エンジェル投資家(個人投資家)からの出資
エンジェル投資家は、創業間もない会社に出資を行う富裕層の個人のことを言います。投資の見返りとして、株式や転換社債を受け取ることが一般的です。
欧米では、富裕層がエンジェル投資家として将来有望なベンチャー企業に投資をしており、日本でもエンジェル投資家は増加傾向にあります。
中小企業ファンド
中小企業ファンドは、ファンドの組成者である投資会社(ベンチャーキャピタル)が目的に合わせたファンドを組成し、複数の投資家から資金を集め、その資金で中小企業に投資を行い、キャピタルゲインなどで利益を上げ、その利益を投資家へ分配するというものです。
出資を希望する企業は、ファンドの組成者である投資会社の審査経て、出資の可否を検討してもらいます。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、不特定多数の人々に対し、比較的少額の資金提供を呼びかけ、事業資金の提供や協力などを行う資金調達方法です。
インターネット上で製品開発や新規プロジェクトの立ち上げを告知・アピールし、それを見た不特定多数の人々が資金提供を行う仕組みです。
詳しくは「クラウドファンディングで資金調達!特徴やメリット・デメリットを解説」をどうぞ。
M&A(株式・事業譲渡)
M&Aは、株式の一部や全部、事業部門、子会社を売却することで資金調達する方法です。
ちなみに、M&Aで株式や事業を売却する時の選択肢は2つあります。
- 仲介会社に買い手探しを依頼する
- M&Aマッチングサイトに登録する
どちらの方法を選ぶかは売却のスピードを重視しているのか、じっくり買い手を探すのかによって異なります。
ちなみに、「M&Aマッチングサイトおすすめ6選【事業・会社売却で資金調達】」という記事でマッチングサイトを紹介していますので、興味がある方は是非どうぞ。
法人の資金調達:資産を現金化(アセット・ファイナンス)

資産を現金化(アセット・ファイナンス)して資金調達する方法を5つ紹介します。
- 遊休資産過剰在庫の売却
- ファクタリング(売掛債権の売却)
- セール&リースバック
- 保険の積立金の解約
上記のとおりです。
遊休資産の売却
使用していない遊休資産を売却することで資金調達する方法です。
遊休資産は保有しているだけでコストがかかりますので、使っていない、あるいは使う予定の無い資産を売却し、現金化して資金繰りに回すことを検討しましょう。
ちなみに、「【注意】銀行融資を受けられない会社の決算書の特徴17選」でも解説しているとおり、遊休資産を保有し続けていると、銀行の評価は下がりますので、早めに処分を検討するようにしましょう。
過剰在庫の売却
販売の見込みがある在庫を保有していても問題はありませんが、過剰な在庫を抱えている状態は好ましい状態とは言えません。
その理由は2つあります。
- 毎月コストが発生する
- 過剰在庫は陳腐化リスクがある
上記のとおりです。
毎月コストが発生する
過剰在庫を抱えているというだけで、次の2つのコストが毎月発生します。
- 保管コスト(倉庫料)
- 管理コスト(在庫管理の人件費)
過剰在庫を減らして、これ以上、余計なコストがかからないよう検討しましょう。
過剰在庫は陳腐化リスクがある
過剰在庫を抱えていると、在庫が陳腐化するリスクが出てきます。
例えば、今の時点で売却すれば10の価格がつくところ、時間の経過と共に在庫の価値が5分の1、あるいは10分の1に目減りしてしまう可能性があります。
過剰在庫は保有し続けてもメリットはないので、売却処分して資金調達とコストカットを実現しましょう。
ファクタリング(売掛債権の売却)
ファクタリングは、商取引で発生した売掛債権をファクタリング会社に買取ってもらう事で現金化する資金調達方法です。
例えば、掛による取引で商品・サービスを販売した場合、通常は締め日から30日~60日後にならないと入金されませんが、売上が確定している売掛債権をファクタリング会社に買取ってもらう事で、入金日まで待たなくても現金化する事ができるという仕組みです。
ファクタリングは融資ではなく、あくまで売掛債権の売買なので、金利は発生しませんが、買取手数料が発生します。
ファクタリングの買取手数料は、売掛債権を買取って貰う都度発生するので、利用を検討する際は十分な注意が必要です。
詳しくは「【保存版】売掛金で資金調達するファクタリングの仕組みや注意点を徹底解説【基礎知識】」をどうぞ。
セール&リースバック
セール&リースバックは、会社が所有している資産を一度売却し、資産の買主(売却相手)とリース契約を締結することで資産を借り受けるという方法です。
売却できる資産の一例は次のとおりです。
- 不動産
- 社用車
- 機械設備
会社は売却代金を手に入れることができるというメリットがある一方、リース契約なので毎月のリース料が発生するというデメリットがあります。
保険の積立金の解約
積立性の保険に加入していた場合、保険を解約し、解約返戻金を受け取ることで資金調達できます。
「生命保険の契約者貸付制度」という項目でも解説したとおり、保険を担保に借入を起こすという方法もあります。
満期前に解約すると、解約返戻金が少なくなる可能性もありますが、調達コストの高い資金調達方法と比較すると、保険を解約して解約返戻金を受け取った方がコストがかからない可能性があります。
法人の資金調達:その他

最後に、負債・資本・資産のいずれにも属さない資金調達方法を1つ紹介します。
- 助成金・補助金
上記のとおりです。
助成金・補助金
助成金・補助金は、国や地方公共団体(民間の団体で行っているものもあります)から提供される、返済する必要がない資金です。
返済不要なので、受給することができれば資金繰りは楽になります。
とはいえ、助成金や補助金は誰でも受給される訳ではなく、申請や審査が必要となり、受給の要件として一定の資格が必要な場合もあります。
詳しくは「補助金・助成金の違いや特徴を解説【基礎知識】」をどうぞ。
まとめ
以上、法人の資金調達方法をまとめて紹介しました。
法人の資金調達方法は個人事業主と違い、様々な資金調達方法があります。
公的融資や銀行融資以外にも様々な選択肢がありますので、会社にあった資金調達方法を検討してみましょう。