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信用保証協会の保証付き融資が返済できず、代位弁済されると今後どうなりますか?
現在使用している銀行口座や担保物件はどうなりますか?裁判を起こされますか?
代位弁済の具体的流れや、代位弁済後の返済はどうなるのか詳しく知りたいです。
本記事では、こういった疑問・要望にお答えします。
なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰り改善コンサルタントとして活動しており、年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。
こういった経験をもとに、本記事では、信用保証協会の代位弁済の流れや代位弁済後にどのように請求されるのか、銀行口座や担保物件はどうなるのか、代位弁済に関するあらゆる疑問を徹底的に解説していきます。
保証付融資が返済不能になり、代位弁済を起こすと今後どうなるのかお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
最初に、信用保証協会(以下、「保証協会」といいます。)の保証付融資が代位弁済するとどうなるのか、下記の順に解説していきます。
上記の順に解説します。
代位弁済とは、銀行から保証協会の保証付き融資(「マル保」とも呼ばれます。)を受けた事業者が、元利金ともに返済不能になると、主債務者である企業に代わって保証協会が銀行に対し、借入金を肩代わり弁済することです。
銀行に返済不能になってから保証協会に代位弁済する流れは下図のとおりです。
代位弁済の流れは下記のとおり。
以上が代位弁済の流れです。
代位弁済すると債権者が銀行から保証協会へ代わるため、銀行への返済義務は無くなります。
銀行への返済義務は無くなりますが、銀行に肩代わり弁済を行った保証協会は求償権を取得しますので、今後は保証協会に対して返済義務を負うことになります。
したがって、代位弁済後は保証協会に対して求償債務を返済することになります。
普通保証で融資を受けている場合、保証割合は80%なので残りの20%の部分は銀行負担になります。
無保証の20%分は銀行への返済義務が残りますのでご注意ください。
100%保証で保証付融資を受けた場合、銀行への返済義務は残りません。
100%保証でも、代位弁済前に返済が遅れた分の遅延損害金を銀行から請求される場合がありますので、ご注意ください。
保証協会へ代位弁済すると今後の銀行融資は絶望的になるので、一見すると大ピンチに思えるかもしれませんが、実は大チャンスでもあります。
なぜなら、代位弁済すると毎月の利息支払い負担は無くなり、毎年発生する保証料の支払いも無くなりますので、資金繰りが大幅に改善されるからです。
例えば、1億円を年利2.5%で融資を受けた場合。単純計算で年間250万円の金利支払いが発生します。
保証付融資であれば、別途、保証料を毎年支払う必要がありますが、代位弁済すると金利や保証料の支払い負担が無くなるので、資金繰りは改善します。
一般社団法人全国信用保証協会連合会のサイトで代位弁済件数を公開しています。
データを見れば分かりますが、毎月、全国の事業者が何千件と代位弁済されています。
数多くの事業者が人知れず代位弁済しているという事実を把握しておきましょう。
保証協会に代位弁済するメリットとデメリットは下表のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
借入金の金利を支払わなくて済む 信用保証料を支払わなくて済む | 保証付き融資を受けている銀行口座が凍結する 銀行や政府系金融機関からの借入が絶望的になる 個人信用情報機関に異動情報が登録される 遅延損害金が発生する 不動産を担保に入れていれば換価処分される 連帯保証人への督促 |
詳しくは別記事の「保証協会に代位弁済するメリットとデメリットを解説」をどうぞ。
保証協会に代位弁済してから返済を行うまでの流れを下記3ステップで解説します。
上記のとおり。
保証付融資の返済が90日以上止まると、期限の利益を喪失します。
この時点で銀行口座は一時的にロック(凍結)され、預金口座に入っている資金は全て返済に充当されます。
期限の利益を喪失すると、銀行は保証協会に対して代位弁済を請求するため、代位弁済手続きに入ります。
代位弁済手続きが完了すると、債権者は銀行から保証協会に代わります。
普通保証(保証割合80%)で融資を受けている場合、銀行に対して20%の返済義務が残ります。
保証協会に代位弁済すると、求償権を取得した保証協会から請求を受けることになりますが、この時、無担保と有担保では今後の流れが変わります。
上記順に解説します。
保証付融資を無担保で受けていた場合、保証協会から連絡が来るのではなく、保証協会から債権回収の委託を受けた「保証協会債権回収株式会社(通称:信用保証協会サービサー)」から連絡がきます。
公式サイト 保証協会債権回収株式会社
以下、保証協会債権回収株式会社を「保証協会サービサー」といいます。
銀行から保証付融資を受ける際、社屋や工場などといった土地・建物、ご自宅を担保設定している場合、代位弁済を起こすと保証協会の審査部から次のような連絡がきます。
銀行から代位弁済請求を受けたため、担保物件を換価処分することになります。
今現在、営業で土地・建物を使用しているのであれば3か月待ちますので、不動産の買受先を探して下さい。3か月経っても買受先が見つからなければ競売にかけます。
何年か前であれば、交渉で期限を延長できたのですが、ここ数年は事情が異なり、期限の延長は期待できません。
そのため、不動産を競売で換価処分されてしまうと事業継続が不可能な場合は、買受先やファイナンス先を探す必要があります。
ちなみに、「3か月」と期限を区切られますが、期間中に「買付証明書」を取得して保証協会に提出できれば競売は回避できます。
3か月以内に買付証明書が取得できなけば、競売手続きに進みます。
競売で担保物件が競落され、換価処分が終了すると元本が確定します。
元本が確定すると、窓口が保証協会から債権回収の委託を受けた保証協会サービサーから連絡がきます。今後は保証協会サービサーとやりとりすることになります。
保証協会サービサーから電話・手紙による連絡で、管轄の保証協会サービサーに来るよう呼出を受けます。
日程が合わなかったり、呼出を無視すると事務所や経営者の自宅に訪問してくる場合もあります。
呼出の内容は、今後の返済額の協議についてです。
現在の資金繰り状況に合わせて、今後の返済額を保証協会サービサーと協議します。
毎月の返済額が決まるとコンビニ払い対応の払込票(6~12枚)が発行されますので、払込票で返済することになります。
なお、具体的な返済額は「毎月いくらぐらい返済することになりますか?」という項目で後述していますのでご確認下さい。
保証協会の代位弁済に関するよくある質問とその答えを紹介していきます。
上記のとおりです。
いきなり訪問してくることはありません。
最初は「保証債務について話をしたいので、日程の相談をしたい」といった趣旨の手紙が届きますので、こちらから連絡して、訪問日程を決める、といった流れになります。
訪問の意思を示していれば、催促に来ることはありません。
しかし、手紙が届いているのに連絡しなかったり、電話連絡を無視していると、保証協会サービサーの職員が事務所・経営者の自宅に訪問してきます。
ただ、訪問してきたからといって、その場で「返済して欲しい」などと催促されることはありません。
まずは事情伺いから始まり、そこから、「毎月、いくらぐらいなら返済できそうですか?」という流れになります。
話し合いはいたって紳士的なので、ご安心ください。
いわゆる、夜討ち朝駆けといった回収をされることは100%あり得ません。
また、今後の返済方法に関する話し合いも非常に紳士的ですので、精神的に辛くなることは無いと言えます
担保付きの場合、保証協会審査部の方に「競売による換価処分は3か月しか待たない」と言われたら厳しいと感じるかもしれませんが、何時でも話し合いに応じてくれますので、厳しくありません。
具体的な毎月の返済額は下記のとおりです。
ちなみに、毎月の返済額は残債の多寡に関係なく設定されます。
例えば、下記のようなケース。
Aさんの方が負債総額は圧倒的に多いですが、だからといって、Aさんに対する督促の風当たりがBさんの20倍あるのかというと、そのようなことは100%あり得ません。
AさんとBさんに対する対応、毎月の返済額は同じです。
「ステップ2:債権者が保証協会に代わる」という項目でも解説したとおり、不動産を担保設定している場合、3か月は待ってもらえます。
2012年~2013年頃、あるいはそれ以前であれば、下記記事でも解説しているとおり、交渉で3か月以上待ってもらうこともできましたが、現在は担保処分ありきで話が進みます。
ですので、このままだと代位弁済になりそうだと思ったら、事前に任意売却の準備を進める必要があります。
任意売却の詳しい説明は別記事の「抵当に入っている不動産の保全を図る任意売却について解説」をどうぞ。
ちなみに、保証協会と任意売却の交渉をする際、「都道府県で対応が違うことはありますか?」というご質問をよく頂きますが、基本的に全国一律同じです。
詳しくは別記事の「保証協会の代位弁済後、都道府県で回収方針が違ったりする?」をどうぞ。
期限の利益を喪失した時点で、保証付融資を受けている銀行口座はいったんロック(凍結)されます。
しかし、代位弁済手続きが終わればロックは解除されますので、その後は入出金できます。
詳しくは別記事の「保証協会に代位弁済されると銀行口座は凍結する?【するけど後で解除されます】」をどうぞ。
代位弁済を起こすと取引先に知られてしまい、取引停止になるのでは?と心配される方がいますが、代位弁済を起こした事実は黙っていれば第三者にバレません。
ただし、保証付き融資を受ける際に不動産を担保提供している場合、不動産登記簿謄本を見られたら代位弁済を起こした事実はバレます。
詳しくは別記事の「保証協会に代位弁済した事実は誰かにバレる?【バレるケースは2つ】」をどうぞ。
代位弁済を起こした事実は個人信用情報機関の1つであるKSC(全国銀行個人信用情報センター)に登録され、5年間は履歴が残ります。
つまり、信用情報にキズがつくのでブラックになります。
ちなみに、登録されるのはKSCだけではありますが、国内3つの信用情報機関(CIC・JICC・KSC)は相互に連携しているため、事実上、全ての個人信用情報に残ります。
詳しくは別記事の「銀行融資をリスケすると信用情報に影響する?【結論:影響なし】」をどうぞ。
「代位弁済を起こすと…」、というよりは、銀行融資を90日以上延滞し、期限の利益を喪失すると、クレジットカードの銘柄によっては法人・個人問わずに使用停止になることがほとんどです。
銀行名の付いたクレジットカードは即日停止となります。
ちなみに、一度も支払い遅延を起こしたことが無いクレジットカードでも、期限の利益を喪失した時点で使用停止となります。
クレジットカードの銘柄によって異なりますが、期限の利益を喪失した後でも使い続けることができるクレジットカードは結構あります。
代位弁済を起こしたからといって、全てのクレジットカードが止まる訳ではありません。
「信用情報にキズが付いてブラックになりますか?」という項目でも解説しているとおり、代位弁済になると個人信用情報がブラックになるので、しばらくの間は新規のクレジットカードは作れません。
クレジットカードが止まるとWebサービスやETC・ガソリンの支払いが現金払いになって困る方は、カード払いができるよう、審査不要のカードを作っておくと安心ですよ。
基本的に保証協会の求償債務がある限り、新規融資を受けることは不可能です。銀行に限らず、日本政策金融や商工中金でも同じです。
決算書の「借入金及び支払利子の内訳書」に「保証協会」と記載されている限り、新規融資は不可能です。
基本的には求償債務を全額返済しないと新規融資は不可能ではあるのですが、求償債務をきちんと返済する事業者の救済措置として、「求償権消滅保証」という保証制度があります。
求償権消滅保証を受けることができれば、再度銀行から融資を受けることが可能です。
筆者のお客様で、求償権消滅保証を受けた方が3名います。
といっても、2009年から多くの経営者様とお会いしたうえでの3名なので、非常にレアケースだということをご承知おきください。
詳しくは別記事の「求償権消滅保証とはどんな保証制度?代位弁済の求償権を借換える仕組みについて解説」をどうぞ。
状況次第ではありますが、保証協会が求償債務を免除することはあります。
筆者のお客様で、実際に債務免除の提案を受けた方や、今現在、提案を受けている経営者様もいます。
ただし、とてつもなくハードルが高いので、簡単に考えない方が良いです。
詳しくは別記事の「保証協会は求償権を債権放棄してくれる?【結論:する事はあるけどハードルは高い】」をどうぞ。
代位弁済が実行されてから5年で時効になります。
ただし、「5年経てば時効で負債が消滅する」などと期待しないでください。時効間際に保証協会から訴訟を起こされますので、5年経っても求償債務は消滅しません。
詳しくは別記事の「信用保証協会に代位弁済された債務の時効は何年?【結論:5年】」をどうぞ。
代位弁済したからといって、破産しなければならないというルールはありません。
破産するしないは個人の自由ですから、「ご自由にどうぞ」という他ありません。
詳しくは別記事の「保証協会に代位弁済したら破産しないといけない?【個人の自由】」をどうぞ。
資金繰りが回っている限り、事業を続けることはできます。
実際、続けている方は少なくないですし、代位弁済をきっかけに復活した方も少なくありません。
また、代位弁済の出口戦略はありますので、「代位弁済=(イコール)終わり」ではありません。
詳しくは別記事の「保証協会に代位弁済された企業に生き残りの選択肢はある?【3つあります】」をどうぞ。
「代位弁済された債務の時効は何年ですか?」という項目でも解説しているとおり、時効間際に訴訟を起こされます。
それ以外に訴訟を起こされることはありません。
2009年から現在まで、お客様からそのようなことを聞いたことがありません。
「代位弁済を起こしたら銀行融資は2度と受けれませんか?」という項目でも解説しているとおり、代位弁済を起こした事業者の救済措置である「求償権消滅保証」という保証であれば、今後の返済次第では保証を受けれる可能性があります。
詳しくは別記事の「求償権消滅保証とはどんな保証制度?代位弁済の求償権を借換える仕組みについて解説」をどうぞ。
その他の保証(緊急保証、セーフティネット保証)については、諦める他ありません。
「代位弁済の件数は公開されている」という項目でも解説しているとおり、代位弁済を起こす会社は毎月何千社とあります。
表立って「ウチの会社は代位弁済した」などと口にしないだけで、もしかしたら、取引先も代位弁済をしている可能性がゼロと言い切れません。
ですので、必要以上に悲観的に考える必要はないと思います。
詳しくは別記事の「保証協会の代位弁済件数はどれぐらいある?【絶望しなくて良い理由も合わせて解説】」をどうぞ。
保証協会サービサーは保証協会から債権回収の委託を受けているに過ぎず、債権譲渡された訳ではありません。
そのため、民間の金融機関のように「和解交渉で債権カット」といったことは起こりません。
「保証協会は債務免除してくれますか?」という項目でも解説しているとおり、保証協会側から債務免除の提案をしてくることはあります。
債権譲渡と債権回収の委託は言葉の意味が異なります。お気を付けください。
以上、保証協会の保証付融資が代位弁済になるとどうなるのかを徹底解説しました。
保証付融資が代位弁済すると、銀行や政府系金融機関からの融資は絶望的になりますが、救済措置がありますので、今後2度と借りれなくなるということではありません。
代位弁済を起こしても資金繰りさえなんとかできれば事業継続できます。実際、筆者のお客様で代位弁済してから10年以上経営継続している方は少なくありません。
借入しないで事業継続している方や、新会社を作って新会社で資金調達している方など、いろんな方がいます。
代位弁済したからといって資金調達の可能性はゼロになる訳では無いので、無理して金利を払い続けるのであれば、金利の支払を止めて代位弁済に持ち込むという選択肢もあります。
保証付き融資が返済できなくなるのは仕方がないことではありますが、代位弁済したからといって倒産するわけではないので、生き残りの方策を模索することをあきらめないでください。
ちなみに、生き残るための今後の方向性にお悩みでしたら、筆者が面談相談(有償)に対応していますので、興味のある方は以下のページで詳細をご覧くださいませ。