
リスケジュール中だけど、営業利益は黒字なのに、金利支払いで利益が全て無くなるから資金繰りが苦しい。
売上減少や入金遅れのトラブルもあってここ数ヶ月の資金繰りは特に厳しく、金利の支払いが遅れている。
3ヵ月以上延滞したら保証協会に代位弁済されるから、担当者に相談したら「このままだと代位弁済を起こすから、破産するしかない」と言われたよ。金利の支払いが無ければ資金繰りは回るのに、破産しないといけないなんて悔しいよ…。
代位弁済しても破産しなくて済む方法があれば知りたい。
この記事では、こういった疑問にお答えします。
- 信用保証協会に代位弁済したら破産しないといけないということはない【結論】
- 信用保証協会に代位弁済して破産した方が良いケースは4つ
なお、この記事を書いている筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰りや事業再生コンサルタントとして活動しております。
これまでお手伝いさせて頂いた企業は年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。
こういった経験を元に、この記事では、信用保証協会の保証付融資を代位弁済してしまったら破産しないければならないのか?という疑問に対する回答と、代位弁済して破産した方が良いケースを4つ紹介します。
信用保証協会に代位弁済したら破産しないといけないということはない【結論】


銀行からマル保(保証付き融資)の借入があり、現在リスケジュール中の場合、金利と保証料を毎月支払うことになります。
- 銀行 → 金利支払い(毎月)
- 信用保証協会 → 保証料の支払い(毎年)
負債過多の状態にある企業が、金利と保証料を支払い続けるのは、正直、楽な事ではありません。
本業で利益を出しても、金利支払いで利益が無くなってしまえば、手元資金は増えませんので、ギリギリの資金繰りを余儀なくされます。
ちょっとした入出金のズレが起きたり、取引先からの入金遅れが発生すればたちまち資金がショートしてしまい、金利の支払いができなくなります。
この時、金利の支払いを待って欲しいと銀行に相談すると、担当者から「金利が払えない状態が続くと保証協会に代位弁済されますよ。そうなると破産するしかないですよ」と言われる事があります。
3ヵ月以上金利の支払いを延滞し、金融事故扱いとなり、マル保(保証付融資)が信用保証協会に代位弁済されると、破産しないといけないのでしょうか?
結論から言うと、代位弁済を起こしたからといって、破産しなければならないという決まりはありません。
破産するかどうかを決めるのは経営者個人の判断ですから、債権者に「破産しないといけない」と言われて破産するようなことなんか無いからです。
破産するしないは自分で決めること
「【保存版】信用保証協会に代位弁済されるとどうなる?【網羅的に解説】」という記事でも解説しているとおり、代位弁済を起こすと信用保証協会から一括返済するよう求められます。
しかし、あくまで「返済を求められる」だけであり、それ以上のことは何も求められません。
信用保証協会から債権回収の委託を受けた保証協会サービサーから今後の返済方法について話し合うために呼び出しを受けたり、会社に訪問されることもありますが、普通の話し合いです。
保証協会サービサーから「破産して欲しい」などと言われることは一切ありませんし、淡々と「月にいくらぐらいなら払えますか?払える範囲内で返済して下さい」と言われるだけです。
それに、もし、「破産して欲しい」と言われたとしても、破産したければすればよいですし、破産したくなければしなければ良いだけの話です。
それ以上でもそれ以下でもありません。
ちなみに、余談ではありますが、この記事を書いている筆者は2009年から現在まで、代位弁済を起こした数多くの経営者の方とお会いしてきましたが、信用保証協会から「破産して欲しい」と言われた方を1人として見たことはありません。
債権者による破産申立ても起こらない
「破産するかしないかは自由」というと、たまに「信用保証協会に債権者破産を申立てられるのでは?」というご質問をいただくことがありますが、そのような事は起こりません。
そもそも、銀行に返済できなくなったからこそ代位弁済を起こした訳ですから、そのような債務者に対して債権者破産を申立てる債権者はいるはずがありません。
それに、債権者破産を申立てるのは何百万円もの費用がかかります。申立てたところで1円も回収できません。
回収できない相手に何百万円も無駄な金を捨てるような債権者はいません。
ちなみに、銀行の担当者以外にも、余計な不安をあおる専門家もいます。
不安をあおられて判断ミスをしないよう注意しましょう。
資金繰りが回るなら事業継続した方が良い
代位弁済すると金利の支払いや保証料の支払いが無くなりますので、その分、資金繰りは楽になります。
今後の銀行融資は絶望的になりますが、営業収支はトントン、若しくは黒字で、事業継続に必要な以下の支払いができているのであれば事業継続した方がよいです。
- 役員報酬はきちんと手に乗っている(普通に生活ができる)
- 取引先や給料の支払いが期日どおりきちんとできている
- 税金や社会保険料の支払いができている
代位弁済を起こしても、事業継続ができているのであれば、生き残るための選択肢が出てくるからです。
事業継続していれば生き残りの選択肢が出てくる
銀行の担当者や専門家の「破産しないといけない」という言葉を真に受けて破産すると、そこで全てが終わりますが、事業継続をしていれば、生き残るための選択肢が出てきます。
具体的な選択肢は以下のとおりです。
- 第二会社方式での再生
- 求償権消滅保証を狙う
- 何もしない(現状維持 or 時効狙い)
破産すれば選択肢はゼロですが、事業継続していれば、生き残るための選択肢がでてくるのです。
ちなみに、上記選択肢の詳しい解説は「信用保証協会に代位弁済された企業に生き残りの選択肢はある?【3つあります】」をどうぞ。
信用保証協会に代位弁済して破産した方が良いケース4つ


代位弁済を起こしたからといって破産する必要は全くありませんが、「こんな方は破産した方が良いかも…」というケースが下記4つあります。
- 債権者との交渉が精神的に辛い場合
- 一般債権者から執拗に催促を受けている場合
- 自分の名義で資産を持ちたい場合
- 一度リセットしてまた起業したい場合
上記のとおりです。
債権者との交渉が精神的に辛い場合
代位弁済を起こすと、今後の支払い方法について話し合う事になるのですが(あくまで任意)、以下いずれかに該当するような方は、破産した方が良いかもしれません。
- 債権者と1度でも話し合いをするのが嫌だ
- 多額の負債が記載されたハガキを見るのが精神的に辛い
- 銀行から内容証明が届く事が辛い
上記に1つも該当しなければ、破産する必要はないです。
一般債権者から執拗に催促を受けている場合
金融債権者以外の一般債権者(取引先)から執拗に催促を受けており、受け流す事ができず、催促を受けるたびに神経をすり減らすような方は破産した方が良いです。
金融機関と違って、一般債権者はオフィス・事務所にこまめに訪問してきたり、経営者の自宅に昼夜問わず訪問してくる場合があります。
受け流せるなら良いですが、そうで無ければ、神経をすり減らしますから、破産した方が良いです。
自分の名義で資産を持ちたい場合
法人で借入を起こす際、経営者個人は借入の連帯保証を入れる事になりますので、法人が返済できなくなれば、法人の負債は経営者個人が負う事になりますので、資産があれば回収対象となってしまいます。
自分の名義で資産を持つには、選択肢は2つしかありません。
- 負債を全額返済する
- 破産する
個人で何千万、何億円の負債を全額返済するのは現実的ではありません。
破産して免責を受ければ、自分名義で資産を持てるようになります。
ちなみに、状況次第では経営者保証に関するガイドライン(廃業支援)を活用することで、破産しなくても保証債務を整理する事が可能です。
詳しくは「【銀行融資】連帯保証を外す事はできる?【経営者保証ガイドラインを活用すれば可能】」をどうぞ。
一度リセットしてまた起業したい場合
「一度負債をリセットして、また新たに起業して融資を受けたい」とお考えの方は、破産した方が早いです。
破産して免責許可を受ければ負債は完全に消滅します。
免責を受けてから5年は融資を受けれませんが、5年経てばまた融資を受けれるようになります。
ちなみに、日本政策公庫と信用保証協会には、一度事業に失敗した方が利用できる融資・保証制度があります。
- 日本政策金融公庫:再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
- 信用保証協会:再挑戦支援保証
一度破産した人に対する手厚い支援がありますので、リセットしたいとお考えの方は破産を視野に入れて今後の方向性を考えた方がよさそうです。
まとめ
以上、信用保証協会に代位弁済したら破産しないといけないのか?という事について解説しました。
代位弁済を起こしたら破産しなければならないという決まりはありません。破産するしないは個人の自由なので、事業を続けたければ続ければ良いですし、破産したければすれば良いです。
それだけのことです。