
資金繰りが厳しくて借入金の返済ができなくなりそうだけど、返済ができなくなるとこの先どうなるのかな?
債権者に「訴訟を起こして財産を差押える」と言われたけど、どうすればいいのかな?
「このまま返済できないと大変な事になる」、「一生死ぬまで請求する」と言われたけど、破産するしか方法はない?
この記事では、こういった疑問にお答えします。
借入金の返済ができなくなったら淡々と回収行為をされるだけ【結論】


借入金の返済ができなくなることが現実味を帯びてくると、いろいろな不安が湧き出てくると思います。
特に、債権者から「返済できないと大変なことになる」とか、「一生死ぬまで請求する」等と面と向かって言われたりすると、不安に思うかもしれません。
しかし、結論から言うと、借入金の返済ができなくなったら淡々と回収行為をされるだけで、それ以上の事は起こりません。
ですので、この時点で破産を考えたり、気に病む必要は全くありません。
債権者は淡々と回収行為を行うだけ
借入金の返済できなくなると、当然、債権者から返済するよう催促されます。
期限の利益があるうちは電話や訪問、葉書などで淡々と催促されるだけで済みますが、期限の利益を喪失すると債権者から訴訟を起こされます。
訴訟については争っても意味が無いので債務者側で何か対応するようなことは特になく、粛々と判決を待つ事になります。
判決が出ると債権者は債務名義を取得する事ができ、ここでようやく強制執行ができるようにな状態になります。
債務名義を取得すると、債権者は以下の回収行為ができるようになります。
- 預金口座の差押
- 売掛金の差押
- 事務所への強制執行
取引先からの入金に使用している預金口座を差押えられたり、取引先の売掛金を押えられようものなら、事業継続は困難になります。
取引先への支払い・従業員の給料支払いができなくなるばかりか、取引先に差押え通知が送達されたら取引停止になる可能性が出てきます。
回収されたくなければ事前に対策すればよいだけ
債権者に回収されたくなければ、事前に対策しておけば、回収されるような事は殆どありません。
「債権者は淡々と回収行為をおこなうだけ」という項目で回収行為をされると説明しましたが、以下の対策をしておけば回収されるような事はありません。
- 預金口座 → 決算書に載ってない口座に移す(新たに口座開設する)
- 売掛金 → 取引内容を口外しない
- 事務所への強制執行 → 金庫に現金を入れておかない
ちなみに、「銀行口座の差押は簡単?債務者の口座の特定は難しい【今後は法改正で裁判所が照会】」という記事でも解説しているとおり、銀行口座の差押えは簡単ではありません。
借入金の返済ができなくなると、債権者に「大変なことになる」とか「一生死ぬまで請求する」等と脅されても、蓋を開けてみればこんな程度で済むのが実情です。
ビジネスパートナーから債権者と債務者の関係になったときの注意点1つ


借入金を返済している間はビジネスパートナーという対等の関係で付き合いを続けることができますが、借入金の返済ができなくなると、ビジネスパートナーから債権者と債務者という関係に成り下がります。
このような関係になった時の注意点は下記1つです。
- 債権者は回収のためなら息を吐くように嘘をつく
上記のとおりです。
債権者は回収のためなら息を吐くように嘘をつく
ビジネスパートナーの関係であればお互い嘘をつく必要は無いですが、債権者と債務者という関係になってしまうと状況は一変します。
今まで対等の立場だったのに、債権回収の対象としてしか見られなくなります。
債権者は債務者から1万円でも多く回収する事が至上命題です。
債務者が今持っている現金を他の支払いに回されたらその分回収できなくなる訳ですから、少しでも有利に回収するため、息を吐くかのように嘘をついて回収しようとするようになります。
債権者の嘘に惑わされてしまうと正常な判断ができなくなるばかりか、取り返しのつかない行動を取ってしまう事になりかねませんので、債権者に何を言われても気にしないようにしましょう。
ちなみに、以下の記事で債権者の嘘に惑わされて家を3つも手放してしまったケースを紹介しています。こんな悲惨過ぎる例は極端かもしれませんが、正常な判断ができなくなってしまった好例ともいえます。
こんな目に合わないためにも、気にしないようにしましょう。


債権者が催促する時によく使う嘘のフレーズ4つ


筆者がご相談者様から「債権者にこんな事を言われたのですが…」とご相談を受ける際に最もよく相談される嘘のフレーズを4つ紹介します。
- 返済してくれないと訴訟を起こすことになり、仕事どころではなくなりますよ
- 一生、死ぬまで請求することになりますよ
- 一括で請求する事になり、差押えしかありませんよ
- 社長、この先大変な事になりますよ
上記のとおりです。
返済してくれないと訴訟を起こすことになり、仕事どころではなくなりますよ
この記事の冒頭でも解説しているとおり、借入金の返済が滞る、期限の利益を喪失すると債権者に訴訟を起こされます。
訴訟を起こさないと債権者としても不良債権の処理が進みませんから、ほぼ確実に訴訟を起こしてきます。
とはいえ、訴訟が原因で仕事が手につかなくなるぐらい、債務者の身の回りが慌ただしくなるような事は一切ありませんので、これはただの脅し文句に過ぎないです。
初めて経験する方は訴状が届いて数日は「この先どうなるのか…」等と、不安に感じてしまう場合も当然あると思いますが、判決が出て支払命令書が届いたとしても、無い袖はどう頑張っても振りようがありません。
何も持っていなければ取られるものが何もないのですから、悩む意味が全くありません。
ですから、訴訟を起こされたからといっても、気にする必要は全くありません。
仕事どころではなくなったという経営者を見たことがない
仕事柄、返済に行き詰り、債権者から訴訟を起こされたという方のご相談が少なくありませんが、訴訟が原因で仕事がどころではなくなったという方を2009年から現在まで、1人として見たことがありません。
不安に駆られて寝つきが悪くなってしまったという方はいるかもしれませんが、仕事が手につかなくなるぐらいガクブルになってしまったという方は、今まで見聞きした事が無いです。
一生死ぬまで請求することになりますよ
これについては現実的ではありません。一応、債務者が死ぬまで請求しようと思えばできなくはないですが、債権者にも労力と経費がかかります。
そもそも、債権には時効が存在します。
請求書を送っただけでは時効を中断することはできませんから、内容証明を送付して時効を半年間中断させたり、訴訟を起こして時効を10年延長したりする必要があります。
回収できない債務者相手に、労力と経費をかけて執拗に追いかけてくる債権者がどれ程存在するでしょうか。
商事債権の時効(5年)の節目で訴訟を起こしてくる債権者は多いと思いますが、それ以降、1円も回収できない債務者に対して、訴訟の手続きの労力と経費をかけて執拗に追いかけてくる債権者は非常に少ないです。
ですので、一生死ぬまで請求が行くというのは、正直、現実的とは言えません。
ちなみに、以下の記事で時効について解説していますので、是非どうぞ。


一括で請求する事になり、差押えしかありませんよ
「差押え」というフレーズを多用してくる債権者は多いですが、実際、差押えを実行するかというと、なかなか実行されないケースが殆どです。
もちろん、負債の額にもよりますが、基本的に「差押えますよ!」と言ってくる債権者は何もしないケースが多いです。
そもそも、本気で資産を差押えようと思ったら、債務者に気付かれないよう、水面下で動くのが通常です。
わざわざ「これから差押えの準備に入る」等と手の内をさらすアホな債権者はいません。
なぜ、差押えすると言い続けて、実際はやらないのか
差押えって口では簡単に言えますが、債務者の資産を差押えるのに時間と費用がかかる割には、回収できるかどうかが分からないので、やらない場合が殆どです。
例えば、債務者の銀行口座を差押える場合、以下の流れで口座を差押える事になります。
- 差押えの対象となる銀行口座の特定
- 訴訟を起こして債務名義を取得する
- 債務名義を取得後、強制執行
この、面倒なステップを踏んで、差押えを実行したとしても、口座にお金が入ってなければ不発に終わります。
また、訴訟を起こされた時点でまともな思考の持ち主の経営者であれば、「預金口座を押えられるかも」と考えるのが通常ですので、預金口座からお金を引き下ろします。そうなると差押えは不発で終わります。
債権者もそんなに暇ではないですし、回収できるかどうか分からない債務者相手に労力と経費をかけてまで何度も手続きする事はありません。
ですので、「差押えますよ!」と言いつつも、実際はやらないケースが殆どです。
社長、この先大変な事になりますよ
この脅し文句については、申し訳ないですが、筆者もうまく解説できません。
何をもって「大変」なのか、筆者は全く理解できないからです。
恐らく、単純に債務者の不安を煽って、精神的に優位に立とうして、「返済しないとこの先大変になるかもしれない」と思わせたいだけだと思いますが、大変になるような事はまずありません。
「おばけは怖いですよ」と言っているのと変わらないと思ってます。
借入金の返済ができないと、銀行から新規融資を受ける事が絶望的にはなりますが、ノンバンクであれば調達できる可能性が残されていますし、普通に生きていく上で不都合になるような事は殆どありません。
まとめ
以上、借入金の返済できないとどうなる?債権者に大変な事になると言われたけど、破産するしかない?ということについて解説しました。
借入金の返済ができないと、債権者に訴訟を起こされ、預金口座や売掛金を押えられたりする可能性がありますが、これらは事前に対策することで回避する事ができます。
それ以上の事は起こらないので、過剰に心配する必要は全くありません。
返済ができないというバツの悪さもあり、債権者から執拗に催促を受けると精神的に消耗すると思いますが、その状況はいつか慣れますから、債権者に何を言われても気にしないよう、適当に受け流しましょう。