
信用保証協会は各都道府県に拠点があるけど、都道府県が異なれば回収方針が異なることとかあるのかな?
隣県にある取引先の社長から、「すごく親身に対応してくれた」って話を聞いたけど、自分の場合はどうなのかな?厳しいのかな、それとも多少は協力してくれたりするのかな?
本社屋や工場を担保に入れてマル保(保証付融資)で借りたから、代位弁済になったら任意売却の交渉の余地があるかどうか、交渉して競売を待ってもらえるかどうか知りたい。
この記事では、こういった疑問にお答えします。
なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰りや事業再生コンサルタントとして活動しております。2009年から活動しており、また、全国の中小企業経営者様からご相談を受けているので、数多くの事例に触れています。
こういった経験を元に、この記事では、代位弁済された債権の回収スタンスが、都道府県別に異なるかどうかを解説します。
代位弁済後の信用保証協会の債権回収方針は全国一律同じ【結論】


資金繰りにお悩みのお客様からよく、「信用保証協会の対応は都道府県ごとに異なる事がある」という、噂レベルの話を聞く事が良くあります。
良く聞くお話の一例をあげると下記のとおりです。
- 経営者仲間からK県の信用保証協会は対応が厳しいけど、隣県のS件は対応が180度違うらしい。
- A県の信用保証協会に代位弁済された時は競売を半年以上待ってもらえたけど、S県の信用保証協会は3カ月しか待たないと頑なに言われたらしい。
このように、客観的に話を聞く限り、都道府県別で対応が異なるような感じに聞こえてしまいますが、
結論から言うと、信用保証協会の回収方針は全国一律同じなので、都道府県別で対応が異なるというような事は基本的にはありません。
筆者の仕事柄、クライアント様と信用保証協会に直接訪問することがあり、役職者の方とお話しする機会がありますが、その際に
「都道府県単位で対応が異なる事ってありますか?」と聞くと、
口を揃えたように「全国一律同じです」という回答が返ってきます。
ですので、下記のように都道府県別で対応が異なるというような事は基本的にはありません。
- K県の信用保証協会 → 債権回収に積極的
- Y県の信用保証協会 → 債務者に協力的
担当者によって対応が異なるケースはある
基本的に全国一律回収方針が同じではあるのですが、担当者によって、若干、対応が異なるケースはよくあります。
基本的な回収方針は同じではあるのですが、担当者の性格の違いによって、大きく2通りの対応に分かれます。
- 代位弁済になってしまった経営者を心配して色々なアドバイスをしてくれる。
- 「我関せず」というように、事務的に淡々と処理しようとする
ちなみに、こういった事は信用保証協会に限らず、銀行や税務署、年金事務所でもある事です。
信用保証協会の担当者によって対応が異なるケースを2つ紹介


筆者が実際にコンサルティングの現場でお客様や信用保証協会の担当者から直接聞きした対応が異なるケースを2つ紹介します。
- 経営再建に協力的な担当者のケース
- 事務的に処理しようとする担当者のケース
上記のとおりです。
経営再建に協力的な担当者のケース
経営再建に協力的な担当者の方にあたると、換価処分ありきで話を進めるようなことはあまりせず、今後のアドバイスをしてくれたり、換価処分を多少待ってくれたりする事があります。
例えば、代位弁済後に担当者から連絡がきて、何時ぐらいに競売にかかるのかを質問してみると、
「具体的な返済プランを提示していただかないと、○か月後に競売の手続きを進めるよう上から言われてますが、○日までに資料を揃えてもらえれば上に掛け合い、すぐに競売にならないようにします。」
といった感じで、
担保物件の保全を少しでも図れるよう、任意売却の準備期間を多少長めに設定してくれることもあります。
ちなみに、以下の記事で任意売却について解説していますので、参考にしてください。


また、競売を申立てる事が決定したら、事前に「今月末に競売を申立てることが決まりましたが、金額次第では任意売却に応じる事も可能です。」と教えてくれたり、その後のアドバイスをしてくれる担当者の方がいます。
このような担当者にあたると、比較的動きやすいと思います。
事務的に処理しようとする担当者のケース
しかし、事務的に処理しようとする担当者にあたると、淡々と回収される事になってしまいます。
例えば、競売にかけるのを待って欲しいといった趣旨の相談をすると、次のように淡々と回答されるだけで終わります。
「○月○日までに具体的な返済プランを提示して下さい。残債は年内で完済するプランを提出して下さい。できないなら競売に着手します。
任意売却をご希望であれば価格次第で検討しますが、それも○日までに買付証明書を提出して頂かないと検討の余地もありません。」
この手の担当者にあたると、何を質問しても「細かいことは弁護士さんに聞いた方が早いですよ。」と、淡々と言われるだけで終わります。
このように、担当者の性格によって対応が異なる事はあります。
信用保証協会に代位弁済されても担保物件の保全を図るポイント3つ


最後に、マル保融資(保証付融資)を受ける際に営業資産を担保に入れた際に、担保物件の保全を図るポイントを3つ紹介します。
- 代位弁済を視野に入れた時点で買受先を探しておくこと
- 担保物件の相場価格を把握しておくこと
- ノンバンクでファイナンスする事を想定して相場の2割の自己資金を用意すること
上記のとおりです。
代位弁済を視野に入れた時点で買受先を探しておくこと
「【保存版】信用保証協会に代位弁済されるとどうなる?【網羅的に解説】」という記事でも解説しているとおり、マル保融資(保証付融資)の返済(元金+利息)を止めてから90日以上延滞すると、期限の利益喪失となり、代位弁済の手続きに入ります。
つまり、実際に支払いをストップしてから代位弁済の手続きがスタートするまで3カ月以上の時間がかかる訳です。
借入金の元利金を止めるという検討をする際、実際に支払いを止める数ヶ月前から「今後の返済をどうするか?リスケジュールの延長か、あるいは位弁済するか。」という検討をする場合が殆どです。
例えば、返済ストップの検討を3カ月ぐらい前から検討していれば、検討に3カ月間、支払いを止めてから3カ月以上、計6カ月以上の時間は確保できる訳です。
半年以上の時間があれば、営業しながらでも買受先を探す時間は捻出できると思いますので、代位弁済を視野に入れた時点で買受先を探すという事は必要だといえます。
担保物件の相場価格を把握しておくこと
買受先を探す際、同時に担保物件の相場価格を調べておく必要があります。
相場価格を把握していないと買受先に具体的な話ができません。
もし、「買受けても良い」という方が名乗りを上げてくれたとしても、物件の相場価格も調べていないと、相談を受けた側からしたら、
「ある程度の相場価格ぐらい調べてから話を持ってきて欲しい」と感じるのは間違いありません。
買受先を探すと決めたら事前に担保物件の相場価格を調べておきましょう。
ちなみに、物件の相場価格を調べる方法は下記2つあります。
- 有料 → 不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する
- 無料 → 自分で調べる
理想は不動産鑑定士の鑑定評価ではあるのですが、買受先が現れるかどうかが分からない段階で、鑑定評価を依頼するのは心理的なハードルが高いと思いますので、とりあえずは無料で調べるのがおすすめです。
無料で調べる方法はいくつかありますが、おすすめは「不動産一括査定サービス」です。
「「不動産一括査定サービス」なら匿名で売却相場価格を無料で調査可能【おすすめのサイト3選】」という記事でも解説しているとおり、複数の業者に一括で不動産売却の見積もり依頼ができますので、客観的な相場価格を調査するのに結構重宝します。
ノンバンクでファイナンスする事を想定して相場の2割の自己資金を用意すること
相場価格を調べたら、任意売却のファイナンスをしてくれるノンバンクをいくつか目星を付けておきましょう。
銀行融資で買受け資金を調達できれば良いのですが、買受先の属性にもよりますが、任意売却の買受け資金を銀行融資で調達するのは難しい場合が殆どです。
特に親族間での任意売却は敬遠される事が少なくないので、ノンバンクでファイナンスするケースが殆どです。
ノンバンクは物件価格の8割までしか融資が実行されない
ノンバンクでファイナンスする場合、物件価格の8割までしか融資は実行されません。
例えば、任意売却の対象となる物件の相場価格が5,000万円という査定結果が出た場合、物件価格の8割にあたる4,000万円の融資が実行されます。
残りの2割の部分については「自己負担」となりますので、1,000万円の自己資金を用意できないと任意売却は不可能となります。
自己資金が準備できずに任意売却が頓挫してしまうケースはとてつもなく多いので、担保物件の保全が必要な方が代位弁済する場合、自己資金を用意しておく必要があるということを憶えておきましょう。
まとめ
以上、信用保証協会の債権回収の対応について解説しました。
債権回収の対応は基本的には全国一律同じですので、県が異なるから方針が異なるという事はありません。
担当者の性格によって多少の温度差はありますが、基本的な対応は同じなので、知り合いに聞いた話を信じて対応の仕方を見誤らないようにしてください。