
経営革新の承認を受けたら信用保証協会の保証枠が増えて資金調達できると聞いたけどホント?
他にも、銀行融資が受けやすくなる・金利優遇など、色々メリットがあるみたいだけど、融資を受けれるならチャレンジしてみたい。
経営革新計画の承認を受けると融資を受けれるようになるのか知りたい。
この記事では、こういった疑問にお答えします。
経営革新計画の承認を受けても融資を受けれるとは限らない【結論】


経営革新計画は、中小企業が経営の向上を目指すために「新たな取り組み」を行うために立案する中期的な事業計画のことで、計画の内容が都道府県に承認されると、政府系金融機関による低利融資や、信用保証協会の保証枠の拡大、税制優遇を受けれるというメリットがあります。
特に、信用保証協会の保証枠の拡大のメリットは大きく、通常の保証とは別枠で保証枠が倍に増えるので、保証付融資の枠を使い切っている企業は別枠を狙って経営革新計画にチャレンジされる企業も少なくありません。
ちなみに、経営革新計画のことをネットで調べると、
- 信用保証協会の保証枠が倍増するから銀行融資を受けれるようになる
- 銀行からプラスの評価を受ける(融資が受けやすくなる)
などといった情報がわんさか出てきます。
こうした情報をみて、「経営革新計画の承認を受ければ銀行融資を受けれるようになる」と思い込んでる方をよく見かけますが、
結論から言うと、経営革新計画の承認を受けたからといって、必ずしも融資を受けれるようになるとは限りません。
理由は、経営革新計画の承認と融資の審査は別問題だからです。
経営革新計画の承認と融資の審査は別問題
経営革新計画の承認と融資を結び付けて考えている方や、また、そのような情報を提供しているコンサルタントの方を見かける事がありますが、経営革新計画の承認と融資の審査は切り分けて考える必要があります。
なぜなら、経営革新計画の審査と金融機関の融資審査では、審査のポイントが全く異なるからです。
- 経営革新計画の審査 → ビジネスの新規性や、将来の付加価値・経常の伸び率を見る
- 融資の審査 → 過去の財務内容が8割で、将来の計画はあまり考慮しない(進捗状況しか見ない)
経営革新計画の審査は将来のP/L(損益計算書)に着目している事に対し、金融機関の審査は過去の経営状況P/L(損益計算書)とB/S(貸借対照表)に着目しているという違いがあります。
経営革新計画は財務内容や既借入金の状況を審査される訳ではありませんので、赤字体質の企業や債務超過の企業でも、経営革新計画の承認を受ける事はできます。
しかし、金融機関の審査は過去の実績をベースに審査しますので、赤字体質の企業や債務超過の企業に対して融資は消極的になります。
ちなみに、銀行が赤字・債務超過企業に対する融資が消極的になる理由は以下の記事をどうぞ。
財務内容が悪ければ計画の承認を受けても融資は受けれない
「銀行融資を断られた!謝絶理由を教えてくれない理由と融資を断る原因を解説」という記事でも解説してるとおり、金融機関の審査は財務内容が8割です。
これは銀行に限った話ではなく、政府系金融機関(日本政策金融公庫・商工中金)や信用保証協会も同じです。
いくら将来の計画を策定しても、金融機関は過去の実績しか見ません。
つまり、経営革新計画の承認を受ける事ができたからといって、必ずしも融資を受けれるとは限らないのです。
経営革新計画の承認を受ける意義3つ


経営革新計画の承認を受けても、金融機関から融資を受けれないのであれば、経営革新計画の承認を受けても意味ないのでは?と思われるかもしれませんが、そのような事はありません。
企業が経営革新計画の承認を受ける意義は下記3つあります。
- 定性面でプラスにはなる
- 様々な支援措置を受けることができる
- 計画を策定することで自社の現状を再認識できる
上記のとおりです。
定性面でプラスにはなる
融資の審査は基本的に定量評価(財務内容)が大きなウエイトを占めていますが、定性面も審査の対象となります。
定性面とは、主に以下3つの要因のことをいいます。
- 企業に属する要因 → 経営者のマネジメント能力や従業員の構成などを評価
- 外部関係者・法人に属する要因 → 取引先・外注先、関与専門家などの評価
- 業界および市場に関する要因 → 業界の外部環境、競合他社などの状況を評価
経営革新計画の承認を受けることができたという事実は、融資の審査を受けるうえで「企業に属する要因」のプラスの評価を受ける事ができます(とはいえ、微々たる評価ではありますが…)。
経営革新計画の承認を受けた事をアピールして融資を受ける事ができた事例
あくまで、経営革新計画で承認された事業に対する融資という資金使途ではありますが、運転資金・設備資金のマル保融資(保証付融資)が出たというお客様からの報告は何件か受けています。
各事例に共通しているのが以下の点です。
- 計画の承認を受ける前、新規融資を依頼したらNGだった
- 計画の承認を受けた事をアピールしたら、「承認された事業に対する融資なら再検討する」と言ってくれた
資金使途がかなり限定されますが、新規融資をしてくれるようになったのは大きいと思います。
様々な支援措置を受けることができる
経営革新計画の承認を受けると、下記5つの支援措置を受けれます。
- 保証・融資に関する優遇措置
- 海外展開に伴う資金調達の支援措置
- 投資・補助金の支援措置
- 販路開拓の支援措置
- その他優遇措置
経営革新計画の承認を受けることで受けれる優遇措置の中で、最もメジャーなのは「信用保証協会の保証枠の別枠設定(保証枠が倍になる)」です。
この優遇措置を狙いで経営革新計画を検討している経営者の方をよく見かけますが、冒頭でも伝えたとおり融資の審査なので、財務内容が悪ければ融資を受ける事はできませんので、くれぐれもお気を付け下さい。
ちなみに、各支援措置の詳しい内容については、中小企業庁が配布している資料に記載されていますので、資料をご確認下さい。
参考リンク:経営革新計画 進め方ガイドブック | 中小企業庁(10.2MBあります)
計画を策定することで自社の現状を再認識できる
経営革新計画の申請をする際、当然、事業計画を策定することになりますが、以下のステップを踏んで計画を策定することになります。
- 計画を策定することで自社の現状や課題を再認識できる
- 改善のポイントが把握できる
- 自社の経営資源を活かして業績を上げるためには、どのような取り組みを行えば良いのか?という視点で計画を策定
普段、経営計画を策定していない企業が、このような過程を踏んで事業計画を策定することは、自社の現状を再認識できる良い機会になります。
また、「経営革新計画の承認を受ける」という目標設定をすることは、意義がある事だと思います。
計画の承認を受ける目的が資金調達だと徒労に終わる可能性あり


経営革新計画の承認を受けたからといって、必ずしも金融機関から融資を受ける事ができるという訳ではありませんから、計画の承認を受ける目的が資金調達にフォーカスしてしまうと徒労に終わる可能性があります。
計画の承認を受ける事を資金調達にフォーカスして徒労の終わったケースを筆者は沢山見てきました。
最も多く見聞きするのが下記のようなケースです。
- 「経営革新計画の承認を受けたら、信用保証協会の特別枠を得られて資金調達できるようになる」という情報を入手する
- 経営革新計画の承認を受けるため何か月もかけて事業計画を策定し、経営革新計画の承認を得る
- 「これで資金調達できる!」と喜び勇んで金融機関の扉を叩いたのも束の間、 「この内容(財務内容)で融資は厳しいですよ。」と、バッサリ断られる。
- 承認を受けた時点で借りれるものだと思い込んでいたので、「あの書類を作った時間は何だったのか」と、途方に暮れる。
2013年~2016年にかけて、こういったお悩みを毎月のように見聞きしました。
経営革新計画の承認を受ける目的が資金調達にフォーカスしていると、新規融資を申し込んで断られたら途方に暮れてしまいますから、「経営革新計画の承認と融資の審査は別」という事を認識したうえで、経営革新計画の承認にチャンレンジしましょう。
まとめ
以上、経営革新計画の承認を受けたら融資を受けることができるのか?ということについて解説しました。
経営革新計画の承認と金融機関の融資は別物ですから、一緒くたに考えてしまうと徒労に終わる可能性があります。
金融機関の融資は財務内容が8割ですから、経営革新計画の承認を受けても、財務内容が悪ければ資金調達は難しくなります。
なので、経営革新計画の承認を受ければ資金調達できるという思い込みは排除した方が良いです。