
このままだと資金ショートして、取引先への支払いができない!振出手形の決済もできないよ…。
借入金の返済もできないし、このままだと、事業継続に必要な資産が競売にかけられるから、倒産するしかないですよね?
この記事では、こういった疑問にお答えします。
資金ショートで何もしないと倒産するけど倒産は回避可能


手元資金が足りず、取引先への支払いや借入金の返済ができそうもなく、資金ショートするのが現実味を帯びてくると、「倒産するしかないのか…」と思うかもしれません。
実務上、資金ショートという状態は「倒産」と定義されていますので、資金ショートを回避できなければ「事実上の倒産」ということになります。
しかし、倒産を回避する方法はいくつかあります。
このまま何もせずに資金ショートを回避するための施策を行わなければ倒産しますが、資金ショートを回避する施策を行う事で、倒産は回避可能です。
資金ショートを回避する最も有効な施策は、通常の資金繰りから緊急時の資金繰りを実行する事です。これで、ほとんどの場合で資金ショートを回避する事ができます。
通常の資金繰りから緊急時の資金繰りを実行する
通常の資金繰りとは普段の支払い方法のことで、手元にあるお金を支払日が到来した順番にお金を支払うことをいいます。
手元資金に余裕がある時なら当たり前の行動だと思いますが、資金繰りが厳しい時に支払日が到来した順番にお金を払っていたら確実に資金ショートします。
そのため、資金ショートを回避するために、通常の資金繰りではなく、緊急時の資金繰りを実行して資金ショートを回避します。
緊急時の資金繰りの具体的な手順
緊急時の資金繰りは「銀行融資を断られたら一刻も早くやるべき6つの事!現状把握から資金繰りの見直しについて解説」という記事でも解説しているとおり、支払いに優先順位をつけて、優先順位の高い順に支払いを済ませることをいいます。
優先順位が低い支払いは支払額を減額したり、支払いを一時的にストップしたりして対応します。
具体的な支払いの優先順位は次のとおりです。
- 手形支払い
- 従業員の給料
- 取引先の支払い
- 事務所維持費(必要最低限)
- 税金・社会保険料
- 銀行返済
上記の優先順位に基いて支払いを実行します。
ちなみに、優先順位を誤ると倒産確率が上がりますので、ご注意ください。
資金ショートすると倒産と思い込んでいる人のよくある勘違い3つ


資金ショートすると倒産と思い込んでいる人のよくある勘違いを3つ紹介します。
- 手形不渡りを出すと倒産する
- 支払いジャンプなんて不可能だから倒産するしかない
- 担保付き融資を返済できなければ競売に掛けられるから倒産する
上記のとおりです。
手形不渡りを出すと倒産する
手形を利用している方には説明不要だと思いますが、手形不渡り(手形事故)を1度でも起こすと手形不渡りの事実は全ての銀行に周知されますので、与信が悪化し、今後の銀行融資は非常に難しくなります。
また、半年間に不渡りを2回出したら取引停止処分(当座預金口座取引停止処分)を受けてしまい、「事実上の倒産」という扱いになります。
こうしたことから、手形不渡りを起こすと倒産すると思い込んでいる方が多いですが、手形不渡りを出したからといって、必ずしも倒産する訳ではありません。
実際、筆者のお客様にも手形不渡りを起こし、取引停止処分を受けた方が何名かいらっしゃいますが、今でも経営継続しています。
また、2009年まで会社を経営していた筆者の義父も、不渡りを半年以内に2回出したことで手形事故を起こし、取引停止処分を受けましたが、家(住居兼事務所)、工場等といった担保物件はノーダメージでした。
取引停止処分を受けて手形は使えなくなり、手形決済をしていた取引先から色々言われたりしたようですが、掛での取引に変更してもらい、取引停止処分を受けてから6年以上事業を続けていました。
このように、手形不渡りを起こしたからといって、必ずしも倒産する訳ではないのです。
リースを組んで、法人カードも作れた事例
筆者の義父が会社を経営していた時に、手形事故を起こし、取引停止処分を受けましたが、営業車のリースも従来どおり組むことができましたし、工場で使用するフォークリフト等のリースも組むことができました。
また、法人クレジットカードの審査も普通に通りました(キャッシング枠はゼロでしたが…)。
支払いジャンプなんて不可能だから倒産するしかない
「取引先への支払いができなければ倒産」と思い込んでいる方がいますが、取引先への支払いが難しい場合、交渉で支払いを待って頂いたり、延べ払いに変更してもらう事で倒産を回避する事ができます。
支払いが難しければ、正直にその旨伝えて交渉すればよいのです。
もちろん、このことがきっかけで以下のように、取引条件が悪化することは十分考えれらます。
- 与信枠の縮小 → 掛による仕入れが半額に縮小、あるいはゼロ(現金取引)など。
- 仕入価格の上昇 → 数%上がるケースは良く見聞きします。
- 支払いサイトの短縮 → 60日だったのが30日に短縮される、あるいはそれ以下。
とはいえ、失った信用は取り戻す事ができますので、誠意をもって交渉にあたることが重要です。
取引先は本当に支払いジャンプを受け入れてくれる?
筆者が関与してきたケースで言えば、基本的に入口の段階で断ってくる企業はあるものの、一度ぐらいなら支払いジャンプを受入れてくれるケースが殆どです。
ジャンプが2回目、3回目となると、初回の時と比較したら明らかに厳しくなりますが、一度ぐらいなら殆どの企業が受け入れてくれます。
詳しくは「取引先に支払いができない!どうすれば良い?注意点や対応方法を解説」をどうぞ。
担保付き融資を返済できなければ競売に掛けられるから倒産する
金融機関への返済ができなくなり、期限の利益を喪失して担保処分の要請がきた場合、この時点で絶望する人が少なくありません。
しかし、必要の無い不動産(遊休資産)だけを処分するよう交渉したり、事業継続に必要な不動産は担保処分しないよう交渉して、競売による換価処分を猶予してもらう事は不可能ではありません。
実際、債権者と交渉して担保処分を猶予してもらっている企業は少なくありません。
最悪、競売ありきで話が進みそうであれば、任意売却等の方法で保全を図る必要がありますが、交渉次第で買受先を探す時間を貰えたりしますので、その間に買受先を探したり、ファイナンス先を探し、スポンサーや身内に売却するという方法も検討することができます。


全く交渉しないと、淡々と換価処分の手続きに入ってしまいますが、窮状を訴え、その後の返済プラン提案すると、不動産の担保処分を猶予して貰えたり、任意売却の買受先を探す時間を貰えたりする事ができるようになるのです。


資金ショートしたけど倒産回避してメディアに露出していたケース【実例】


筆者の義父が会社を経営していた時、手形不渡りを起こして取引停止処分を受け、取引先に支払い遅延を起こしながらも義父は
「ウチは同業者からはゾンビ会社と呼ばれている(笑)」等と笑いながら、新聞やラジオ、テレビの取材などを受け、メディアに露出していました。
もちろん、メディアに露出する時は満面な笑顔です。
年商の4倍近い負債を抱えた経営者とは思えないほど、清々しい笑顔でメディアに露出していました。
メディアに露出すると、支払遅延を起こしている取引先から連絡が来たりしましたが、怒号が飛ぶ訳でもなく、非常に好意的な連絡ばかりです。
一番印象に残っているやり取りは次のような感じです。
「社長、この前テレビ出てたね!バンバン注文が入って儲かっちゃうんじゃないの~(笑)沢山売れて儲かってからで良いから、金が余ったら溜まってる買掛を少しだけ払ってよ~(笑)」
こういった応援の連絡はありましたが、「テレビに出るぐらいなら金払え!」といったお怒りの連絡は一切ありませんでした。
このように、通常の支払いをしていれば100%倒産している義父の会社でも、緊急時の資金繰りを実行して資金ショートを回避して、その後、何年も事業を継続していたのです。
まとめ《諦めない限り会社はそう簡単には倒産しない》
以上、資金ショートするとどうなる?ということについて解説しました。
資金ショートが目前に迫ってきているというのに、何もしなければ資金ショートして倒産しますが、緊急時の資金繰りを実行すれば倒産は回避できます。
もちろん、事業を継続する事で、取引先にどんどん迷惑をかけてしまうという状況であれば、事業継続しない方が良いですが、今、取引先に待ってもらう事で近い将来、全額払える事が確実視されている状況であれば、交渉して支払いを待ってもらった方が良いです。
取引先に支払いができないことを告げるのは言いにくいと思いますが、「倒産したくない」という思いがあるなら、緊急時の資金繰りを実行する他ないのです。
最後に、今後の売上の目途が全く立たない、という状況であれば、「会社の末期症状とはどのような状態?6つの特徴と理由を解説」という記事でも解説しているとおり、倒産する他無いのは言うまでもありません。