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銀行から信用保証協会(以下、「保証協会」といいます)の保証付き融資を受けています。
保証付き融資の返済ができないと代位弁済すると思いますが、メリット・デメリットを詳しく知りたいです。
本記事では、こういった疑問にお答えします。
なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰り改善コンサルタントとして活動しており、年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。
こういった経験をもとに、本記事では、保証協会の保証付き融資が代位弁済するメリット・デメリットをまとめました。
代位弁済すると借入金の金利や保証料を支払わなくて済むので、保証付き融資の返済を止めて代位弁済にもちこむのも資金繰り改善における選択肢の一つです。
代位弁済の詳しい流れは別記事「保証協会に代位弁済されるとどうなる?」をどうぞ。
とはいえ、当然デメリットもありますので、「代位弁済しなければよかった」と後になって後悔しないよう、デメリットをきちんと把握しておきましょう。
それでは最初に、保証協会に代位弁済するメリットから解説していきます。
保証協会に代位弁済するメリットは下記2つです。
上記のとおり。
銀行から保証付き融資を受けたら毎月約定通り金利を支払う必要がありますが、保証協会に代位弁済すると金利を支払わなくて済みます。
例えば、年利2.5%で保証付き融資の残高が1億円ある場合。
下記のように、毎月20万8千円の利息支払い負担が発生します。
しかし、代位弁済すると銀行に金利を支払う必要がなくなるため、毎月20万8千円の支払い負担が無くなります。
代位弁済後、保証協会から毎月少しずつ返済するよう求められますが、月々の返済は1~3万円ぐらいで収まるケースがほとんどなので、支払い負担は激減します。
保証付き融資を受けると、毎年、融資残高に対して一定の信用保証料が発生しますが、代位弁済すると信用保証料を支払う必要がなくなります。
以上が保証協会に代位弁済するメリットです。続いて、デメリットを解説していきます。
保証協会に代位弁済するデメリットは下記6つです。
上記のとおり。
保証協会に代位弁済すると保証付き融資を受けている銀行口座は一時的に凍結(ロック)します。凍結中は入出金できなくなります。
代位弁済の手続きが完了するまでロックは解除されません。
厳密には、保証付き融資の返済を90日以上延滞し、期限の利益を喪失した時点で銀行口座は凍結します。
銀行口座が凍結して起こることは下記3つです。
代位弁済の手続きが完了すると凍結は解除され、口座は使えるようになります。
普通保証(保証割合80%)で保証付き融資を受けている場合、代位弁済しても負債残高の20%が銀行に残ります。
例えば、普通保証の保証付き融資の残高が5,000万円の場合。
代位弁済すると下記のように銀行に1,000万円の負債が残ります。
銀行に負債が残っている状態で入金があると即時相殺されます。負債がなくなるまで相殺され続けるのでご注意ください。
基本的に、代位弁済された銀行口座は使わない方が安全です。
詳しくは別記事の「信用保証協会に代位弁済されると銀行口座は凍結する?【凍結は期限の利益喪失時】」をどうぞ。
代位弁済すると、基本的に銀行や政府系金融機関からの借入は絶望的となります。
求償債務を負っている間は新規融資は絶望的です。
詳しくは別記事の「代表者の個人信用情報がブラックでも銀行融資を受けられる?」をどうぞ。
一応、代位弁済された求償債務の返済を続けると「求償権消滅保証」という、代位弁済した企業に新たな保証を付ける救済措置はありますが、ハードルは非常に高いです。
求償権消滅保証を受けるには、ある程度継続して求償債務を返済していく必要があります。
求償債務以外の負債があれば(買掛金、税金、社会保険料など)求償債務の返済と同時にきちんと履行しない限り、保証を受けることはできません。
この記事を書いている筆者は、資金繰り・事業再生コンサルタントとして2009年から活動していますが、実際に求償権消滅保証を受けたという方を3人しか見たことがありません。
詳しくは別記事の「求償権消滅保証とはどんな保証制度?代位弁済の求償権を借換える仕組みについて解説」をどうぞ。
代位弁済すると金融事故扱いとなり、個人信用情報機関に異動情報(いわゆる「ブラック」)が登録されます。
個人信用情報機関に異動情報が登録されると、以下の状況が起こります。
リースなどはリース会社によっては利用できることもありますが、基本的に数年間、無担保・無保証での借入は難しくなります(ノンバンクの不動産担保ローンであれば資金調達できる可能性はあります)。
代位弁済すると元本を返済するまで、年率14.6%の遅延損害金が延々と発生することになります。
遅延損害金は解決策がありますので、あまり気にする必要はありません。
不動産を担保に入れて保証付き融資を受けている場合、代位弁済すると競売による換価処分をされます。
とはいえ、すぐに競売に掛けられてしまう訳ではなく、代位弁済の手続き後に保証協会審査部から「今現在、営業で土地・建物を使用していますか?」ということを聞かれます。
この時の返答によっては以下のようになります。
土地・建物を営業で使用しているのであれば、任意売却で保全を図ることができます。ただし、時間が限られているで、早急に動いて買受先を探すようにしましょう。
任意売却で保全を図るには、まずは不動産の市場価格(流通相場)を把握する必要があります。
以下の記事で不動産一括査定サービスを紹介していますので、市場価格を調べる時の参考にして下さい。
保証付き融資を借入した時に連帯保証人を入れていれば、連帯保証人に督促が行きます。
代位弁済すると、主債務者、連帯保証人あわせて督促状が郵送されます。
したがって、第三者の連帯保証人を入れていれば、第三者の連帯保証人も当然請求されます。
保証付き融資を受ける際、第三者の連帯保証人を入れて融資を受けた場合、保証契約を解除できる可能性があります。
もちろん、簡単な話ではありませんが、筆者が実際に関与した事例でも保証契約を解除できた方もいますので、全く不可能な話ではありません。
詳しくは別記事の「【銀行融資】連帯保証を外す事はできる?【経営者保証ガイドラインを活用すれば可能】」をどうぞ。
以上、保証協会に代位弁済するメリット・デメリットを解説しました。
代位弁済すると返済負担が激減するのが大きなメリットではありますが、一方で、新規融資が絶望的、クレジットカードが使えない、担保物件が競売の危機にさらされるなどのデメリットがあります。
メリット・デメリットを把握したうえで、代位弁済するのかしないのかを判断してください。