
これ以上、銀行から融資を受けるのは難しいから、売掛を買取ってくれるファクタリングの利用を検討しているよ。
手数料は高いけど、ファクタリングなら入金サイトが長くてもキャッシュが手に入るから資金繰りは改善すると思うよ。
何回も利用しなければ損益にそこまで影響しないと思うけど、他に気を付けた方が良いことがあれば教えて欲しいよ。
この記事では、こういった疑問にお答えします。
- ファクタリングを利用して資金繰りが改善するかどうかは手数料次第【結論】
- 買取手数料の高い業者のファクタリングを利用して起こることを段階別に解説
- ファクタリングを利用して資金繰りが悪化したご相談者様の事例
- ファクタリングを利用して資金繰りが改善するケース1つ
なお、本記事の筆者は、資金繰りや事業再生に関するご相談を10年近く受けており、ほぼ毎月のように、「買取手数料の高いファクタリングを利用したら、資金繰りが厳しくなった」というお客様からご相談を頂いております。
こういった経験を元に、この記事では、ファクタリングを利用すれば資金繰りは改善するのかどうか、お客様の事例を交えながら詳しく解説していきます。
ファクタリングを利用して資金繰りが改善するかどうかは手数料次第【結論】


ファクタリングは融資と異なり、商取引で発生した売掛債権を保有していれば資金調達できるため、銀行融資が難しい方、あるいはリスケジュール中に資金調達が必要な方からの利用が広がっています。
通常、企業間取引で商品やサービスを販売した場合、契約で決められた入金日まで現金を手にすることができませんが、ファクタリングを利用する事で、入金日を待たなくても売掛債権を現金化する事が可能になるため、買掛債務の支払いよりも前に現金を手にする事が可能となります。
このような説明を聞くと、ファクタリングを利用した方が資金繰りが改善するのではないか?と思うかもしれませんが、資金繰りが改善するかどうかについては、結論から言うと、ファクタリングの手数料次第と言わざるを得ません。
ファクタリングを利用すると買取手数料が発生します
ファクタリングを利用すると、ファクタリング会社に支払う所定の買取手数料が発生します。
買取手数料の相場は「【保存版】売掛金で資金調達するファクタリングの仕組みや注意点を徹底解説【基礎知識】」でも解説しているとおり、ファクタリングの方法によって異なりますが、一般的な買取相場は次のとおりです。
- 2社間ファクタリング → 10%~20%(30%近くチャージする業者もあります)
- 3社間ファクタリング → 1%~5%(基本10%未満)
つまり、500万円の売掛債権をファクタリング会社に買い取って貰って資金調達する場合、買取手数料が5%であれば、25万円の手数料で済むところ、
20%の手数料をチャージする業者でファクタリングすると、100万円の手数料が発生することになります
買取手数料を20%チャージされれば資金繰りは確実に悪化します
買取手数料が数%程度のファクタリングを利用する分には、ノンバンクの手形割引と同じぐらいの手数料料率だと思いますので、粗利はもちろん減りますが、資金繰り的には良くなると思います。
しかし、買取手数料を20%近くチャージされるようなファクタリングを利用しているような場合、粗利の大部分を喰われることになりますので、粗利率が50%ぐらいある業種でもない限り、言い方は悪いですが、「棺桶に両足突っ込んでしまっている状態」にあると言えます。
買取手数料の高い業者のファクタリングを利用して起こることを段階別に解説


買取手数料の高い業者のファクタリングを利用すると起こることを3つの段階別に解説します。
- 第1段階:売掛をすぐに現金化できるので資金繰りが改善したと感じる
- 第2段階:2~3カ月継続して利用すると急激に資金繰りが苦しくなる
- 第3段階:利益が無くなるからファクタリングをやめたいと思ってもやめれない状態に突入
上記のとおりです。
第1段階:売掛をすぐに現金化できるので資金繰りが改善したと感じる
ファクタリングを初めて利用した時、売掛金がすぐに現金化され、買掛の支払いよりも先に現金を手にする事ができるので、「支払いより先に現金を手にする事ができて、資金繰りが改善した」と感じると思います。
しかし、それは錯覚に過ぎません。
この時点で粗利の大部分が喰われているため、買掛の支払いは楽にこなせても、販管費の支払いをする際に「普段よりも現金が少ない」ということに気付くと思います。
第2段階:2~3カ月継続して利用すると急激に資金繰りが苦しくなる
2回目に利用する頃になると、買掛の支払いはできると思いますが、買掛を払った後、想像していたよりも現金が少ないことに気づくようになります。
資金繰りが厳しい企業は、もしかしたら「給料の支払いが足らない」、「事務所・倉庫の賃料が足らない」、「社会保険料が足らない」ということが起こるかもしれません。
この状態になると、「買取手数料が高いから、また利用するのはマズイ!早急に止めなければ!」となる方が殆どなのですが、ファクタリングを止めると買掛の支払いができなくなるので、3回目も利用することになるケースが殆どです。
第3段階:利益が無くなるからファクタリングをやめたいと思ってもやめれない状態に突入
買取手数料の高いファクタリングを3回以上利用するようになると、会社の資金繰りは火の車になっていることが殆どです。
事業を続ければ続けるほどお金が無くなってしまうので、ここまでくると、「ファクタリングをやめたい」と考えるようになるのですが、一度、買取手数料の高いファクタリングに手を付けてしまうと、止めたくても止めれない状態に突入してしまいます。
実際、筆者のお客様でもこのような状態に陥ってしまった方からのご相談をよく頂きます。
ちなみに、ファクタリングを止める方法に興味がある方は、「ファクタリングをやめたい!【簡単ではないけど方法は2つあります】」という記事で詳しく解説していますので、是非どうぞ。
ファクタリングを利用して資金繰りが悪化したご相談者様の事例


買取手数料の高いファクタリングを利用した事によって、負のスパイラルに陥ってしまった方からのご相談事例を紹介します。
利用するきっかけから、どのように苦しくなったのか、順を追って解説します。
- ファクタリングを利用するようになったきっかけ
- 買取手数料が20%のファクタリングを利用
- 粗利が吹き飛び、販管費が賄えずに毎月200万円の赤字が発生
- 半年間で喪失したキャッシュは1,200万円
上記のとおりです。
ファクタリングを利用するようになったきっかけ
- 業種:建築・建設業
- 年商2億(月商平均1,700~1,800万円)
- 粗利率:17%~23%で推移
- 営業利益:ゼロ
- 経常利益:▲300万円(既借入金の利息)
- 補足説明:銀行融資はリスケジュール中で新規の資金調達はできない。売上の50%は大手企業からの下請けで、残りの50%は地元企業からや、個人客からの請負
ご相談者様に、ファクタリングを利用するきっかけを聞いたら、次のように答えてくれました。
「仕入した資材の買掛債務の支払い資金が足りないので、期日どおりに支払いをするための資金調達方法を探していたら、売掛債権を買い取ってくれるファクタリングという資金調達方法があるということを知った。
手数料が高いと思ったが、資材を卸てもらっている取引先が大手なので、支払のジャンプを申し出ようものなら、すぐに仕入れを止められてしまい、現場が止まってしまうので、ファクタリングを利用して取引先への支払に充てた。
この説明だけ聞いてしまと「ファクタリングを利用した事で資金繰りの危機を回避した」というように聞こえるかもしれませんが、買取手数料の高いファクタリング利用をきっかけに、さらなる苦境を招くことになってしまったのです。
買取手数料が20%のファクタリングを利用
様々なファクタリング会社があるなか、ご相談者様は買取手数料が20%もチャージされてしまうようなファクタリングを利用してしまったことが運の尽きでした。
もう少し買取手数料の低いファクタリング会社をいろいろと検討できれば良かったのですが、支払い期日が迫っており、審査にかかる時間を考えると、そこまで検討する時間は無かったとの事でした。
しかし、この安易な決断が後々の資金繰り難を招くことになってしまうとは、この時点では想像すらつきませんでした。
粗利が吹き飛び、販管費が賄えずに毎月200万円の赤字が発生
ファクタリング会社に売掛債権の買取を依頼したところ、「大手企業との商取引で発生した1,000万円の売掛については買取ることができますが、残りの売掛債権については与信上の問題と、個人客なので買取ができません。」との回答でした。
1,000万円の売掛に対する買取手数料は20%。つまり、1回利用すると200万円の手数料が発生する事になります。
200万円の手数料が発生したとしても、それ以上に利益が出ていればあまり気にならないでしょうが、ご相談者様の会社の粗利益率は平均17~23%です。
買取手数料が20%もチャージされるファクタリングを利用するということは、粗利が無くなるという事になります。
粗利が無くなるとどうなるか?
粗利が無くなるということは、会社を維持するための販管費が賄えなくなるということです。
ご相談者様の会社では、毎月350万前後の販管費が発生するのですが、200万円の利益が手数料で無くなる訳ですから、当然、資金繰りは厳しくなり、販管費の一部の支払いが遅れたり、滞るようになります。
するとどうなるか?
手元資金が足りなくなるので、商取引が発生したらファクタリングを利用して現金化し、遅れた分の支払いをするようになります。
しかし、この時点で400万円の手数料を負担していることになります。
ご相談者様の年間収支は概況を見れば分かるとおり、経常は300万円の赤字です。
ご相談者様の会社の銀行借入はリスケジュール中なので、元本返済はゼロでしたが、金利だけは支払う必要があります。
しかし、会社には金利を払うほどの余裕資金は無いので、ご相談者様の個人資産から少しずつ切り崩して払っていました。
既借入金の金利ぐらいはなんとか払えるものの、社会保険料や事務所家賃は高額なので、さすがに個人資産で賄うのは難しく、2回目にファクタリングを利用する頃には支払いが遅れるようになったとのことでした。
半年間で喪失したキャッシュは1,200万円
ファクタリングを利用するのを止めたいとも考えたそうですが、3~4回ほど利用する頃には、仲の良い取引先に支払いを待ってもらったり、地元の先輩から何百万円か借りたりするなどしてなんとか資金繰りは回っていたので、
「止めたいけど、とりあえず苦しいながらもなんとか回っているから、売上を上げればなんとかなるかも」と、流れに身を任せるような状態になってしまいました。
筆者が相談を受けた時には「地元の先輩からお金を借りたり、仲の良い取引先に支払いを待ってもらったけど、もう限界です。これ以上はお金を工面できません」と、行き詰った状態でご相談に来られました。
半年間で負担した手数料負担は1,200万円です。
買取手数料を20%もチャージされるようなファクタリングを利用せず、10%を切るようなファクタリングを利用していればここまで状況が悪化するようなことが無かったのは間違いありません。
ファクタリングを利用して資金繰りが改善するケース1つ


ファクタリングを利用して資金繰りが改善するケースは下記1つです。
- 買取手数料が1ケタ台のファクタリングしか使わない
上記のとおりです。
買取手数料が1ケタ台のファクタリングしか使わない
売掛債権の買取手数料が20%もチャージされるようなファクタリングを利用すると、粗利率が50%近くない限り、資金繰りが改善するような事はありません。
粗利の殆どを手数料で喰われる訳ですから、改善するハズがありません。
しかし、買取手数料が一桁台のファクタリングであれば、高額な手数料をチャージされずに済みますので、どうしても利用しなければ支払いが間に合わないというような時は、買取手数料が一桁で済むような、良心的なファクタリングを利用されることをおすすめします。
お、参考までに、買取手数料が1桁台で済むファクタリング会社を3つ紹介します。
- OLTA(オルタ):買取手数料は業界最低水準、最短24時間以内に入金可能。個人事業主対応。数十万円~数百万円の調達を希望している方向け。
- OTTI(オッティ):最短3時間で審査可能。365日電話対応可能。個人事業主対応。30万~5,000万円の範囲で調達を希望している方向け。
- anew(アニュー):OLTAと新生銀行が共同で運営するファクタリングサービス。法人のみ。数百万~数千万円規模の調達希望の方向け。
3社間ファクタリングであれば、1桁台の手数料は比較的たくさんありますが、2社間ファクタリング(取引先に知られない)で手数料が1桁のファクタリング業者は少ないです。
上記のファクタリング会社はいずれも手数料が1桁台ですので、是非検討してみてください。
まとめ《ファクタリングを利用するなら買取手数料が低いところを選びましょう》
以上、ファクタリングを利用すれば資金繰りは改善するのか?という事について解説しました。
ファクタリングを利用して資金繰りが改善するかどうかは買取手数料次第です。
買取手数料が20%も30%もチャージされるようなファクタリングを利用してしまえば、当然、資金繰りは厳しくなり、それどころか倒産一直線だと思います。
しかし、買取手数料が一桁台のファクタリングを利用すれば、資金繰りは多少楽になると言えます。
いずれにしても、ファクタリングの利用を検討する際は、利用した場合のシミュレーションを行ったうえで、利用するかしないかを決断するようにしましょう。