
ウチの会社は負債が多く、負債総額は売上と同じぐらいあるから再生するのは難しいだろうな…。
営業利益は出ているけど、借入金の金利を払うと最終的に赤字になってしまうよ。負債を減らす事ができれば資金繰りは楽になるハズなんだけど、負債が多いから再生できないだろうな。
負債が多い会社は再生が難しいのかどうか知りたい!
この記事では、こういった疑問にお答えします。
負債が多い方が事業再生の難易度は下がります【結論】




負債が多い会社は事業再生の難易度が高く、負債が少ない会社は事業再生の難易度が低いといったイメージをお持ちの方が少なくありません。
- 負債が少ない → 再生しやすい
- 負債が多い → 再生が難しい
しかし、結論から言ってしまうと、負債が多いからといって事業再生の難易度は上がるような事はありません。
逆説的に感じると思いますが、負債が多ければ多いほど、事業再生はやりやすいのです。
負債が多い方が債権カットをしやすいので再生しやすい
負債が多い方が事業再生の難易度が低くなる理由の一つに、債権カットのしやすさが挙げられます。
このことは、「【債務免除】負債が少ないと債権カットの交渉は簡単?【結論:多い方が簡単ですよ】」という記事でも解説してますが、負債が多い方が債権カットの交渉がやりやすく、負債が少なければ少ない程、債権カットは絶望的となるからです。
再生しやすいかどうかの判断は、負債総額よりも営業利益が出ているかどうかがポイント
事業再生が可能かどうかを判断するうえで、負債が多い・少ないで判断しても殆ど意味がありません。
なぜなら、負債がとてつもなく多くても営業利益さえ出ていれば事業継続は可能で、反対に、負債が少なくても営業利益が赤字であれば、事業継続は不可能となります。
つまり、再生できるかどうかの判断は、営業利益が出ているかどうかがポイントとなります。
- 営業利益 = 本業の収益力
事業に収益力があれば負債が多くても再生は難しくない
例えば、「営業利益が出ているけど負債が多いため、年間の利払い負担が大きいため、結局、毎年の経常損益が赤字になってしまう」というケースであれば、負債をカットする事ができれば経常利益は黒字になります。
例えば、下記のように、100の営業利益を獲得することができても、借入金利を払うと最終赤字になるような場合。
- 100(営業利益)-110(借入金利)=▲10(経常損失)
負債をカットすれば借入金利は減少しますので、利益は増加します。
- 100(営業利益)-10(借入金利)=100(経常利益)
しかし、いくら負債が少なくても、営業利益を出せなければ、再生するのは非常に難しいです。
下記のように営業利益が赤字であれば、負債がいくら少なくても最終的な収支は赤字となってしまいます。
- ▲20(営業利益)-▲5(借入金利)=▲25(経常損失)
営業利益が赤字ということは、事業を続ければ続けるほどキャッシュが出ていく状態になりますから、赤字を止めない限り存続不可能な状況に陥ります。
以上のことから、再生できるかどうかの判断は、負債の多い少ないはあまり重要視されず、あくまで「事業自体に利益獲得力があるかどうか」という事がポイントとなるのです。
事業再生の具体例をケース別に2つ紹介


筆者のお客様からのご相談事例を交えながら、負債が多い・少ないという2つのケースを解説します。
- 売上と同程度の負債を抱え再生が難しく思えるけど実際は難しくないケース
- 負債が少ないので再生が簡単に思えるけど実際は非常に難しいケース
上記の順に解説していきます。
売上と同程度の負債を抱え再生が難しく思えるけど実際は難しくないケース
筆者のお客様から「年商と負債総額がほぼ同額になってしまったと」いうご相談を受ける事が多々あります。
具体的には下記のようなケースです。
- 年商20億近くあったが、外部環境の悪化により年商10億前後に半減した。
- 最盛期には5億の売上があったけど、リーマンショック後、売上は下降の一途を辿り、今では1億前後まで下がってしまった。
このような状況の方からお話を伺うと「負債が多くてとにかく資金繰りが大変」という事を言われます。
しかし、このような状況にある方から現況を詳しくヒアリングすると、概ね下記のような回答が返ってくる場合が殆どです。
- 営業利益はなんとかギリギリ出ているけど、金利負担が多過ぎて金利は個人の金で補填している。
- 売上は半減したものの、事業規模に合わせてリストラしたので営業利益はなんとか黒字。
こういったケースであれば、負債を適正な額までカットするだけで事業再生は可能。という結論を出しやすいです。
負債が少ないので再生が簡単に思えるけど実際は非常に難しいケース
負債が少ないけど営業利益がマイナスの場合、再生は難しくなります。
コストカットや、原価の見直し、業務・営業手法の見直し等を着手する事により、営業利益が黒字転換すればよいですが、どうあっても営業利益を出す事ができないような場合は事業再生は非常に難しいものとなります。
こういったケースは事業自体が赤字なのですから、負債の多い少ないは、ほとんど影響を及ぼしません。
いくら負債をカットしたところで、赤字補填のための借入を起こさないと資金繰りが回らないですから、事業を継続するために資金調達が必要となります。
資金調達すればするほど赤字補填の借入が膨れ上がりますので、このようなケースは再生が非常に難しいです。
また、本業が赤字だとスポンサーの協力を得難いため、資本提携や事業譲渡(M&A)等といった方法は絶望的となります。
まとめ
以上、負債が多いと再生は難しいのか?という事について解説しました。
事業再生を考える上で負債総額はあまり重要では無く、営業利益が出ているかどうかがポイントとなります。
どんなに負債が多くても営業利益さえ出ていれば事業再生は難しくありません。しかし、肝心の事業自体に利益を獲得する能力が無ければ、再生する事はできません。
このことから、「うちの会社は負債が多いからもうダメだ」という考えは全く意味が無く、重要なのは事業自体に利益獲得能力があるかどうか、つまり「営業利益が出ているかどうか」という部分がポイントなのです。
ちなみに、以下の記事で「事業規模が小さいと売上減少によるダメージが大きいため、事業再生が難しい」というケースを詳しく解説していますので、興味のある方は是非参考にして下さい。


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