【ファクタリングと手形割引の違い】どちらを利用すべき?

【ファクタリングと手形割引の違い】どちらを利用すべき?

ファクタリングと手形割引の違いは何ですか?

どちらの資金調達方法を検討すべきか知りたいです。

本記事では、こういった疑問・要望にお答えします。

本記事の内容
  • ファクタリングと手形割引の概要
  • ファクタリングと手形割引の違い8つ

なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰り改善コンサルタントとして活動しており、年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。

こういった経験をもとに、本記事では、ファクタリングと手形割引の違いをまとめました。

ファクタリングと手形割引、どちらの方法で資金調達すべきかお悩みの方の参考になれば幸いです。

目次

ファクタリングと手形割引の概要

最初に、ファクタリングと手形割引の特徴や仕組みの違いから解説していきます。

ファクタリングは売掛金の売買

ファクタリング(factoring)とは、商取引の際に発生した売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却して現金化する取引のことです。

商取引で発生した売掛金は入金日を待たないと入金されませんが、ファクタリングを利用することで売掛金を前倒しで資金化できます。

ちなみに、ファクタリングの取引形態は2パターンあります。

  • 2社間ファクタリング(手数料が高い):利用者とファクタリング会社間での契約
  • 3社間ファクタリング(手数料が低い):利用者・売掛先(取引先)・ファクタリング会社の3社間での契約

2社間ファクタリングの場合、利用者とファクタリング会社間での契約になるため、取引先に知られることはありませんが、ファクタリング会社の未回収リスクが増えるため、手数料が高くなります。

一方、3社間ファクタリングは売掛先の承諾をもとに契約するため、売掛先(取引先)にファクタリングを利用する事実がバレます。その代わり、手数料が抑えられています。

ファクタリング会社が売掛金の状況を売掛先に確認できることで未回収リスクが低くなります。それに伴い手数料も低くなります。

手形割引は手形の売買ではなく融資

手形割引は、受取手形を銀行や手形割引業者に持ち込むことで、手形額面を支払期日よりも前に割引された金額で資金化する融資方法です。

手形の割引料(金利)は手形割引を行う金融機関や手形の銘柄によって変動します。

手形割引は手続き上売買に近いものがあり、法的性質上も「売買」として扱われますが、実際の手続きは銀行取引約定書を交わして、「手形を担保に融資」を行うため、基本的には融資とみなされます。

詳しくは別記事の「手形割引(商業手形割引)とは?特徴や注意点を解説」をどうぞ。

ファクタリングと手形割引は売掛債権を現金化するという点においては同じなので混同されやすいですが、法的な性質が異なります。続いて、ファクタリングと手形割引の違いを解説していきます。

ファクタリングと手形割引の違い8つ

ファクタリングと手形割引の違いは下表のとおり8つです。

ファクタリング手形割引
現金化の対象売掛金有価証券
貸金業法の適用の有無適用を受けない適用を受ける
償還請求権の有無なし
[ノンリコース]
あり
[リコース]
資金調達コスト[2者間]手数料6%~18%程度
[3者間]手数料1%~9%程度
[銀行]年利1%~5%程度
[割引業者]年利5%~20%程度
審査の重点項目売掛先の信用力[銀行]割引依頼人の信用力
[割引業者]銘柄の信用力
現金化までの早さ[2社間]当日~5日以内
[3社間]2日~10日程度
[銀行]2週間~1か月程度
[割引業者]当日~5日程度
調達可能な額売掛金の8~9割程度の掛け目で買取額面記載額を調達可能
取引先に知られるかどうか[2社間]知られないことが多い
[3社間]知られる
知られない

順を追って解説します。

現金化の対象

ファクタリングと手形割引は下表のとおり、現金化の対象が異なります。

ファクタリング手形割引
現金化の対象売掛金有価証券

ファクタリングは売掛金を現金化するのに対し、手形割引は現物の有価証券である受取手形を現金化します。

貸金業法適用の有無

ファクタリングと手形割引は、貸金業法の適用の有無が異なります。

ファクタリング手形割引
貸金業法適用の有無適用を受けない適用を受ける

ファクタリングは貸金業法の適用を受けませんが、手形割引は適用を受けます。

貸金業法第2条にも、手形割引は貸付けにあたることが明記されています。

(定義)
第二条 この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。

出典:貸金業法第2条 | e-Gov法令検索

貸金業法適用の有無はどんな違いがあるの?

貸金業法適用の有無により、金利や手数料の上限に差が出てます。

ファクタリングは貸金業法の適用を受けないので、買取手数料や営業面で法的な制限は受けません。

  • 利息制限法の上限金利は適用されない
  • どんな会社でもファクタリングサービスを提供できる

したがって、自由に営業できます。

一方、手形割引は貸金業法が適用されるため、法律で厳しく制限されます。

  • 手形割引を行えるのは「貸金業」の免許を受けた会社だけ
  • 利息制限法による上限金利の適用を受ける(20%)

償還請求権の有無(買い取り後の責任の範囲)

ファクタリングと手形割引では、下表のとおり買取後の責任の範囲が異なります。

ファクタリング手形割引
償還請求権の有無なし
[ノンリコース]
あり
[リコース]
買取後の責任の範囲売掛債権の売却後、取引先が倒産しても責任を負わない取引先が倒産して手形が不渡りになったら買戻し義務が生じる

ファクタリングの場合、ファクタリング会社に売掛債権を売却したら、取引先が倒産しても責任を負うことはありません。

一方、手形割引の場合、取引先が倒産して手形が不渡りになったら、割引依頼人(利用者)に買い戻し義務が発生します。

資金提供を扱う業者目線で見ると下記のような違いがあるのです。

  • ファクタリング会社 → 回収不能リスクを負う(その分手数料が高い)
  • 手形割引を扱う金融機関 → 貸し倒れリスクを負わない(その分手数料が安い)

資金調達コスト

ファクタリングと手形割引では、下表のとおり資金調達コストが異なります。

ファクタリング手形割引
資金調達コスト[2社間]手数料6%~18%程度
[3社間]手数料1%~9%程度
[銀行]年利1%~5%程度
[割引業者]年利5%~20%程度

ファクタリングの手数料は手形割引と違って年利計算ではなく、売掛金を買い取る度に発生しますので、1年に1回以上利用すると、手形割引よりも調達コストは高くつきます。

一方、手形割引は年率の日割り計算なので、ファクタリングよりも調達コストは圧倒的に低いです。

審査で重視されるポイント

ファクタリングと手形割引では、審査で重視されるポイントが異なります。

ファクタリング手形割引
審査で重視されるポイント売掛先の信用力[銀行]割引依頼人の信用力
[割引業者]銘柄の信用力

ファクタリングは売掛先の信用力を重視

ファクタリングは取引先の信用力を重視しているので、利用者の信用力はそこまで問われません。

ファクタリングは手形割引のように買戻し義務がないため、万が一、売掛先が倒産した場合、ファクタリング会社が全てのリスクを負うことになります。

そのため、利用者が下記のような状態にあっても、売掛先に信用力があればファクタリングを利用できます。

  • 赤字決算
  • 税金の滞納
  • 創業間もない会社
  • リスケジュール中
  • ノンバンクの利用中

手形割引は割引依頼人の信用力を問われる

手形割引は割引を行う金融機関によって重視するポイントが若干異なります。

銀行の場合、基本的には割引依頼人(利用者)の信用力を重視されます。振出人の信用力ももちろん重視しますが、万が一、手形が不渡りになったら割引依頼人に買戻し請求をすることになるため、割引依頼人の信用力が最も重視されます。

したがって、財務内容が悪ければ割引は断られます。

一方、割引業者の場合、基本的には手形の銘柄(振出人)重視なので、割引依頼人の財務内容が悪くても審査に通りやすい傾向があります。

現金化までの早さ

ファクタリングと手形割引では、現金化までの早さが異なります。

ファクタリング手形割引
現金化までの早さ[2社間]当日~5日以内
[3社間]2日~10日程度
[銀行]2週間~1か月程度
[割引業者]当日~5日程度

ファクタリングは2社間ファクタリングであれば、最短当日に現金化可能です。オンライン完結型のファクタリング会社であれば、最短当日に現金化できます。

手形割引の場合、割引業者であれば新規でも当日の現金化が可能です。ただし、手形取引の性質上、手形の現物を渡す必要があるため、割引業者が近くに無ければ郵送で手形を送ることになります。そうなると当日の現金化は不可能です。

銀行は新規の割引依頼だと審査に1か月ほどかかりますが、継続的に利用していると、当日に割引依頼しても割り引いてくれることがあります。

調達可能な金額

ファクタリングと手形割引では、調達可能が金額が異なります。

ファクタリング手形割引
調達可能な金額売掛金の8~9割程度の掛け目で買取額面記載額を調達可能

ファクタリングは売掛の掛け目がありますが、手形割引は額面全額に対して資金調達できます。

例えば、ファクタリングで売掛金を9割(90%)の掛け目で買取る場合。
100万円の売掛金を90万円で評価し、そこから手数料を引いた金額を調達できるイメージです。

そのため、売掛金と手形の額面が同じであれば、手形割引の方が調達可能な金額は多いです。

取引先(売掛先)に知られるかどうか

最後は、取引先に知られるかどうかです。

ファクタリング手形割引
取引先に知られるかどうか[2社間]知られないことが多い
[3社間]知られる
知られない

2社間ファクタリングであれば知られないことがほとんどですが、3社間ファクタリングの場合、利用者・売掛先・ファクタリング会社の3社間契約になるため、必然的に知られます。

手形割引は手形受取人が所持している手形の行方を追跡できないので、どこの金融機関で割り引いても、買掛の支払いに受取手形を使用しても、振出人(取引先)は全く分かりません。

まとめ

以上、ファクタリングと手形割引の違いを解説しました。

おわり。

人気記事 【最短即日】法人向けファクタリング7選【オンライン完結で資金調達】

人気記事 個人事業主向けファクタリング会社7選【即日・少額から利用できる】

面白かったらシェアをお願いします!
  • URLをコピーしました!
目次