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取引先への支払い期日が迫っているのに、すべての取引先に支払うことができません。
金額が大きい取引先から払うべきか、小口の取引先から払うべきか分かりません。
支払いが遅れる時、取引先にはどのように連絡すればいいですか?
この記事では、こういった疑問にお答えします。
取引先への支払い期日が迫っているのに、手元資金が足りない。
このような状況になると、「どの取引先から支払うべきか」「支払いが遅れることをどう伝えればよいのか」と悩む経営者は少なくありません。
特に、複数の取引先に未払いがある場合、金額の大きい取引先を優先すべきか、小口の取引先から対応すべきか判断に迷うはずです。
ただし、取引先に支払いができない時は、金額の大きさだけで優先順位を決めるのは危険です。
実務上は、数万円〜数十万円の小口債権者ほど強く督促してくるケースもあります。
本記事では、取引先に支払いができない時の初動対応、支払いの優先順位、小口債権者を軽視してはいけない理由、債権額別の対応方法について解説します。
取引先に支払いができない時は、まず現状を整理することが重要です。
手元資金が足りない状況になると、「どこから払えばいいのか」「誰に連絡すればいいのか」「どの支払いを止めるべきなのか」と焦ってしまうと思います。
しかし、焦った状態で場当たり的に支払いをしてしまうと、本当に支払うべき取引先への支払いができなくなったり、数日後にさらに資金繰りが悪化したりする可能性があります。
まずは、次の3つを確認しましょう。
この3つを整理すると、支払いの優先順位や取引先への連絡内容を考えやすくなります。
最初に確認すべきなのは、いつ・いくら資金が足りないのかです。
たとえば、「月末に500万円の支払いがあるが、手元資金は200万円しかない」という状況であれば、単純に300万円不足していることになります。
この不足額が分からないまま取引先に連絡しても、具体的な支払予定を伝えることができません。
また、支払いができない金額を把握していないと、手元にある資金をどの取引先に振り分けるべきかも判断できません。
そのため、まずは支払予定と手元資金を確認し、いつの時点でいくら不足するのかを把握しましょう。
次に、どの取引先にいくら未払いがあるのかを一覧にします。
取引先ごとの未払い額を整理すると、支払いの優先順位を考えやすくなります。
たとえば、次のように整理します。
このように一覧にすると、金額の大きい取引先だけでなく、数万円〜数十万円の小口債権者も見えるようになります。
支払いができない時は、どうしても金額の大きい取引先に意識が向きがちです。
しかし、実務上は、小口債権者ほど強く督促してくるケースもあります。
そのため、金額の大きさだけで判断せず、取引先ごとの重要度や今後の取引への影響も含めて整理することが大切です。
取引先ごとの未払い額を整理したら、次に支払いの優先順位を決めます。
この時に注意したいのは、単純に「金額が大きい取引先から払えばいい」と考えないことです。
もちろん、大口の取引先への対応は重要です。
しかし、事業継続に必要な仕入先、今後の売上に直結する外注先、少額でも強く督促してくる取引先など、優先して対応すべき相手は金額だけでは判断できません。
また、手元資金をすべて支払いに回してしまうと、数日後の給与、家賃、税金、仕入れ、外注費などが払えなくなる可能性もあります。
取引先に支払いができない時は、目の前の支払いだけを見るのではなく、今後の資金繰りも見ながら優先順位を決める必要があります。
取引先に支払いができない時に注意したいのが、小口債権者への対応です。
普通に考えると、1,000万円の未払いがある取引先と、10万円の未払いがある取引先では、1,000万円の取引先の方が厳しく督促してくるように思えるかもしれません。
しかし、実務上は必ずしもそうとは限りません。
むしろ、数万円〜数十万円の小口債権者の方が、強い口調で督促してきたり、執拗に回収に動いたりするケースがあります。
もちろん、すべての小口債権者がそうだというわけではありません。
しかし、「金額が小さいから少し待ってくれるだろう」と考えて後回しにしていると、想像以上に厳しい対応を受けることがあります。
そのため、取引先に支払いができない時は、大口債権者だけでなく、小口債権者への対応も軽視しないことが重要です。
たとえば、次のような買掛金があるとします。
金額だけを見れば、1,000万円の買掛金があるA社の方が強く怒り、10万円の買掛金しかないB社は「10万円ぐらいなら仕方ない」と待ってくれるように思えるかもしれません。
しかし、現実には逆のケースも多くあります。
10万円の債権者が「金払えこの野郎!」と激昂し、1,000万円の債権者が「起こったことは仕方ないので、今後の支払いについて相談しましょう」と冷静に話し合いに応じることもあります。
大口債権者の場合、債務者を無理に追い込んでしまうと、結果的に1円も回収できなくなるリスクがあります。
そのため、感情的に責め立てるよりも、今後どのように回収していくかを冷静に考える傾向があります。
一方で、小口債権者の場合は、金額が小さいからこそ「これぐらい払えないのか」という感情になりやすい面があります。
その結果、怒りのボルテージが高くなり、強い口調で督促されることがあります。
筆者の経験上、負債の金額と怒りのレベルは、必ずしも比例しません。
むしろ、次のように反比例の関係になることがあります。
もちろん、これはすべてのケースに当てはまるわけではありません。
しかし、支払い不能の現場では、債権額が大きい取引先ほど冷静に話し合いに応じ、小口債権者ほど感情的に回収へ動くケースを何度も見てきました。
大口債権者は、回収不能になった場合の損失が大きいため、債務者を追い詰めるよりも、少しでも回収できる方法を探そうとします。
一方、小口債権者は、「なぜこの程度の金額が払えないのか」という感情になりやすく、怒りが表に出やすいことがあります。
そのため、取引先に支払いができない時は、金額が小さい取引先ほど後回しにしてよいとは考えない方が良いです。
支払いができない時は、どうしても金額が大きい取引先から優先して払いたくなると思います。
大口の取引先を怒らせたくない、取引を止められたくない、信用を失いたくないと考えるのは自然なことです。
しかし、金額が大きい取引先から払えば良いとは限りません。
なぜなら、支払いの優先順位は金額だけで決めるものではないからです。
たとえば、次のような取引先は、金額に関係なく優先して対応する必要があります。
反対に、金額が大きくても、事情を説明すれば分割払いや支払い猶予に応じてくれる取引先もあります。
つまり、支払いの優先順位は、債権額の大きさだけでなく、今後の事業への影響、相手の性格、交渉余地、回収姿勢などを含めて考える必要があります。
小口債権者に対して、「数万円だから少し待ってくれるだろう」と考えるのは危険です。
むしろ、数万円〜数十万円の債権者ほど、早い段階で強く督促してくることがあります。
理由は、債権者側からすると「少額なのになぜ払えないのか」と感じやすいからです。
また、小口債権者の中には、規模の小さい会社や個人事業主もいます。
こちらにとっては数万円〜数十万円でも、相手にとっては資金繰りに影響する大切なお金です。
そのため、「小口だから後でいい」と軽く考えていると、相手の怒りを一気に高めることがあります。
手元資金に限りがある場合でも、小口債権者を完全に後回しにするのではなく、一部だけでも支払う、早めに連絡する、支払予定を伝えるなど、何らかの対応を取ることが重要です。
取引先に支払いができない時の対応方法は、債権額によって変わります。
もちろん、最終的には取引先との関係性、今後の取引継続の必要性、相手の資金繰り状況、交渉余地などによって判断する必要があります。
ただし、債権額ごとに相手の反応や対応の傾向が変わることはあります。
ここでは、次の3つに分けて解説します。
それぞれ見ていきましょう。
1,000万円を超えるような大口債権者は、支払い不能の事実が分かった時でも、意外と冷静に話し合いに応じるケースがあります。
もちろん、金額が大きいため、相手に与える影響は小さくありません。
しかし、大口債権者ほど、感情的に責め立てるよりも、今後どのように回収していくかを冷静に考える傾向があります。
なぜなら、債務者を無理に追い込んで倒産や廃業に追い込んでしまうと、1円も回収できなくなる可能性があるからです。
そのため、大口債権者への対応では、感情的に謝るだけではなく、今後の支払い見通しを具体的に説明することが重要です。
たとえば、次のような内容を整理して伝えます。
大口債権者は、金額が大きい分、曖昧な説明を嫌います。
「払えるようになったら払います」という説明では、相手も判断できません。
支払いが難しい場合でも、現状を隠さず説明し、現実的な支払い案を提示することが大切です。
また、大口債権者は、今後の事業継続に必要な取引先であることも多いです。
そのため、単に支払いを待ってもらうだけでなく、今後の取引をどのように継続するのか、取引条件をどう見直すのかも含めて話し合う必要があります。
数百万円の中堅クラスの債権者への対応は、特に注意が必要です。
このクラスの債権者は、金額が大きすぎてすぐに全額支払うのは難しい一方で、頑張れば一部支払いができそうに見える金額でもあります。
そのため、対応を間違えると、相手の怒りを強くしてしまうことがあります。
たとえば、150万円〜300万円程度の未払いがある場合、取引先からすると「少しでも払えるのではないか」「他の取引先には払っているのではないか」と考えることがあります。
この時に、曖昧な説明をしたり、支払予定を何度も変更したりすると、相手の不信感は一気に高まります。
数百万円の債権者に対しては、次のような対応が必要です。
特に注意したいのは、根拠のない支払約束をしないことです。
「来週には払えます」「月末には何とかします」と言っておきながら、実際には支払えないということを繰り返すと、相手は一気に態度を硬化させます。
支払いが難しい時ほど、できないことをできると言わないことが重要です。
また、数百万円の債権者は、交渉次第で分割払いや一部支払いに応じてくれる可能性があります。
そのため、単に「払えません」と伝えるのではなく、「今月は○万円、来月以降は毎月○万円ずつ支払いたい」といった形で、具体的な案を出すことが大切です。
数万円〜数十万円の小口債権者は、実務上、最も警戒すべき相手です。
金額だけを見れば少額に見えるかもしれません。
しかし、小口債権者ほど、早い段階で強く督促してきたり、毎日のように連絡してきたりすることがあります。
支払いが順調だった時は「社長」と呼んでくれていた相手が、支払いが止まった途端に態度を変えることもあります。
言葉遣いが荒くなったり、強い口調で支払いを迫られたりすることも珍しくありません。
小口債権者への対応で重要なのは、後回しにしすぎないことです。
手元資金が少しでも残っているのであれば、数万円〜数十万円の小口債権から先に支払うことで、トラブルを抑えられる場合があります。
もちろん、すべての小口債権者に全額支払えるとは限りません。
その場合でも、早めに連絡し、支払予定日を伝える、一部だけでも支払う、分割払いを相談するなど、何らかの対応を取ることが大切です。
小口債権者は、金額が小さい分、こちらが軽く見ていると感じると怒りが強くなりやすいです。
「少額だから後でいい」と思っていると、想像以上に厳しい督促を受けることがあります。
そのため、小口債権者ほど、早めに誠実な対応を取る必要があります。
筆者は、2009年に義父の会社が倒産した時、実際にさまざまな債権者の回収行動を見てきました。
義父の会社の事務所によく出入りしていたため、支払いが止まった後に債権者がどのように動くのかを間近で見ることになりました。
その中で特に印象に残っているのは、小口債権者ほど強く回収に動いていたことです。
事務所に置いてあった筆者のパソコンや、妻のパソコンを持っていこうとした方もいました。
少しでも換金したいという気持ちは分かりますが、筆者や妻のパソコンは義父の会社の資産ではありません。
それでも、支払い不能の現場では、冷静な判断ができなくなる人もいます。
また、筆者と少し仲の良かった取引先の担当者から、連帯保証もしていない筆者に対して「今、財布にいくら入っていますか?立て替えてくれないと会社に帰れないんです」と言われたこともあります。
この方とは普通に話せる関係だっただけに、当時はかなりショックを受けました。
さらに、25万円前後の買掛金が残っていた取引先の担当者が、一週間近く、家の近くのコンビニの駐車場で張り込んでいたこともあります。
朝から夕方まで張り付いていて、筆者と妻がコンビニに買い物に行くと、行動を監視されているような状態でした。
こちらは直接の債務者でも連帯保証人でもありません。
しかし、相手からすると、「倒産した会社の関係者」というだけで、感情を向ける対象になってしまうことがあります。
支払いが止まると、それまで普通に接していた人の態度が一気に変わることがあります。
これはきれいごとではありません。
倒産や支払い不能の現場では、お金を回収できない側も追い詰められています。
だからこそ、取引先に支払いができない時は、金額が小さいからといって軽く考えず、早めに対応することが重要です。
取引先に支払いを待ってもらう時は、伝え方が非常に重要です。
同じ「支払いが遅れる」という連絡でも、伝え方によって相手の受け止め方は大きく変わります。
たとえば、支払日の当日や翌日になってから「払えません」と連絡するのと、支払いが難しいと分かった段階で早めに連絡するのでは、相手の印象はまったく違います。
支払いが遅れること自体は、相手にとって迷惑なことです。
しかし、早めに連絡すれば、取引先も自社の資金繰りを調整する時間を確保できます。
反対に、連絡が遅れると、相手の資金繰りにも影響を与え、怒りや不信感を強める原因になります。
そのため、支払いが遅れる可能性があるなら、できるだけ早く取引先に連絡することが大切です。
取引先に支払いを待ってもらう時は、支払いが遅れる理由を正直に伝えましょう。
理由を曖昧にしたまま「少し待ってください」とだけ伝えても、相手は納得しにくいです。
たとえば、次のような理由があるなら、できる範囲で説明します。
もちろん、すべてを細かく伝える必要はありません。
しかし、「資金繰りの都合で支払いが遅れます」だけでは、相手からすると納得しにくい場合があります。
取引先も、自社の資金繰りを考えなければなりません。
そのため、支払いが遅れる理由と、今後の支払い見通しをできるだけ具体的に伝えることが重要です。
支払いを待ってもらう時は、単に「待ってください」とお願いするだけでは不十分です。
できるだけ、支払予定日や分割払いの案を提示しましょう。
たとえば、次のような伝え方です。
このように、具体的な支払予定を提示すると、取引先も判断しやすくなります。
ただし、ここで注意したいのは、守れない約束をしないことです。
支払いが遅れている状況では、相手の怒りを抑えるために「来週払います」「月末には必ず払います」と言いたくなるかもしれません。
しかし、根拠のない支払約束をして、実際に払えなかった場合、信用はさらに落ちます。
一度約束を破ると、次に何を伝えても信じてもらいにくくなります。
そのため、支払予定日を伝える時は、今後の入金予定や資金繰りを確認したうえで、現実的な日付を伝えることが大切です。
すぐに全額を支払えない場合でも、一部支払いができないか検討しましょう。
取引先からすると、まったく支払いがない状態と、一部でも支払いがある状態では受け止め方が違います。
たとえば、100万円の支払いができない場合でも、10万円だけ先に支払うことで、最低限の誠意を示せる場合があります。
もちろん、一部支払いをすれば必ず許してもらえるわけではありません。
しかし、「まったく払う気がない」と思われるよりは、相手の印象を和らげられる可能性があります。
特に小口債権者の場合は、一部支払いではなく、手元資金が許す範囲で全額支払った方がよいケースもあります。
数万円〜数十万円の未払いで強い督促を受けている場合、その支払いを済ませることで、余計なトラブルを防げることもあります。
ただし、一部支払いをする場合でも、他の重要な支払いに影響が出ないかは確認が必要です。
目の前の取引先に払うために、翌週の給与や仕入れが払えなくなっては意味がありません。
一部支払いをする時も、資金繰り全体を見ながら判断しましょう。
取引先に支払いを待ってもらう時は、電話だけで終わらせず、メールや書面でも内容を残しておくことをおすすめします。
電話で話しただけだと、後から「言った」「言わない」のトラブルになることがあります。
特に、支払予定日、分割払いの内容、一部支払いの金額などは、必ず記録に残しておいた方が良いです。
たとえば、電話で相談した後に、次のような内容をメールで送ります。
メールで残しておけば、取引先も社内で共有しやすくなります。
また、こちらとしても、約束した内容を確認しやすくなります。
支払いができない時ほど、口頭だけの曖昧なやり取りは避けるべきです。
支払い条件を変更してもらう以上、内容を残し、約束したことは必ず守る姿勢が重要です。
取引先に支払いができない時は、何をするかも大切ですが、何をしてはいけないかも重要です。
支払いができない状況では、焦りや罪悪感から冷静な判断ができなくなることがあります。
しかし、対応を間違えると、取引先との関係が一気に悪化したり、資金繰りがさらに苦しくなったりする可能性があります。
取引先に支払いができない時にやってはいけないことは、主に次の4つです。
それぞれ解説します。
取引先に支払いができない時に一番やってはいけないのは、説明責任を果たさずに逃げることです。
いわゆる「バックれる」という対応です。
支払いができないという連絡をするのは、非常に気が重いと思います。
相手に怒られるかもしれませんし、取引を止められるかもしれません。
そのため、支払日当日まで連絡しなかったり、支払日を過ぎてから連絡したり、相手からの電話に出なくなったりするケースがあります。
しかし、これは最悪の対応です。
取引先にも資金繰りの予定があります。
予定していた入金が入らなければ、取引先の支払いにも影響が出る可能性があります。
それにもかかわらず、事前連絡もなく支払いが遅れると、取引先は資金繰りを調整する時間を失います。
その結果、怒りや不信感は一気に高まります。
支払いが遅れる可能性があるなら、最低でも数日前には連絡するべきです。
電話で伝えるのが気が重い場合でも、メールやFAXで支払予定や今後の見通しを伝えるなど、必ず何らかの形で連絡しましょう。
支払いができないこと自体も問題ですが、それ以上に問題なのは、説明せずに逃げることです。
取引先から強く督促されると、その場を収めるために「来週には払います」「月末には必ず払います」と言いたくなることがあります。
しかし、根拠のない支払約束は絶対に避けるべきです。
支払える見込みがないにもかかわらず約束してしまうと、約束した日に支払えなかった時、信用をさらに失います。
一度約束を破ると、次にどれだけ説明しても信じてもらいにくくなります。
特に、支払予定日を何度も変更すると、取引先は「この会社は本当に払う気があるのか」と疑うようになります。
支払いができない時ほど、相手の怒りを抑えるために安易な約束をしたくなります。
しかし、守れない約束をするくらいなら、最初から現実的な支払予定を伝えた方が良いです。
たとえば、今月中に全額支払えないのであれば、次のように伝えます。
大切なのは、希望的観測ではなく、実際の資金繰りに基づいて伝えることです。
「たぶん払える」「何とかします」ではなく、入金予定や手元資金を確認したうえで、守れる範囲の約束をしましょう。
取引先に支払いができない時は、強く言ってきた相手から順番に払ってしまうことがあります。
もちろん、厳しく督促してくる取引先への対応は必要です。
しかし、場当たり的に支払いをしていると、本当に優先すべき支払いができなくなる可能性があります。
たとえば、強く督促してきた小口債権者に支払った結果、事業継続に必要な仕入先への支払いができなくなれば、今後の売上に影響が出るかもしれません。
また、一部の取引先にだけ支払っていることが他の取引先に知られると、「なぜこちらには払わないのか」と不満が広がる可能性もあります。
支払いができない時は、声の大きい取引先だけに反応するのではなく、全体の資金繰りを見ながら優先順位を決める必要があります。
そのためには、次のような視点で整理することが大切です。
支払いができない時ほど、感情ではなく、全体の資金繰りと事業継続の観点で判断しましょう。
取引先への支払いができない状況になると、とにかく目の前の資金を用意したくなります。
しかし、焦って危険な資金調達に手を出すのは避けるべきです。
特に注意したいのは、次のような資金調達です。
もちろん、資金調達そのものが悪いわけではありません。
ファクタリング、請求書カード払い、追加融資などが有効なケースもあります。
しかし、手数料や返済条件を確認しないまま利用すると、短期的には支払いを乗り切れても、翌月以降の資金繰りがさらに悪化することがあります。
特に、毎月資金が足りない状態で高コストの資金調達を繰り返すと、資金繰りは急速に悪化します。
一時的な資金不足なのか、慢性的な赤字体質なのかを確認せずに資金調達だけで乗り切ろうとするのは危険です。
取引先への支払い資金を確保することは大切ですが、資金調達をする前に、手数料、返済条件、翌月以降の資金繰りへの影響を必ず確認しましょう。
取引先への支払いができない時は、支払いを待ってもらう交渉と同時に、支払い資金を確保する方法も検討する必要があります。
ただし、焦って資金調達だけに走るのは危険です。
一時的な資金不足なのか、慢性的に資金繰りが悪化しているのかによって、取るべき対応は変わります。
まずは、売掛金の回収や支出の見直しを行い、それでも資金が足りない場合は、ビジネスローン、ABL、請求書カード払い、ファクタリングなどを検討します。
また、借入返済が厳しくなっている場合は、リスケジュールによって毎月の返済負担を減らすことも選択肢になります。
取引先への支払い資金を確保する方法は、主に次の6つです。
それぞれ解説します。
最初に検討したいのは、売掛金の回収を早められないかという点です。
支払いができない原因が、入金と支払いのタイミングのズレであれば、売掛金の回収を早めることで資金不足を解消できる可能性があります。
たとえば、次のような対応です。
売掛金の回収を早めることができれば、新たに借入を増やさずに資金を確保できます。
ただし、取引先に早期入金を依頼する場合は、相手にも資金繰りの都合があります。
無理にお願いすると関係が悪化する可能性もあるため、依頼する相手や伝え方には注意が必要です。
また、売掛金の回収を早めるだけでは、根本的な資金繰り改善にならないケースもあります。
毎月のように資金が足りない場合は、単に入金を前倒しするだけでは翌月以降に同じ問題が起こります。
そのため、売掛金の回収はあくまで一時的な資金確保策として考え、同時に資金繰り全体の見直しも進める必要があります。
次に確認したいのは、不要な支出を一時的に止められないかという点です。
資金繰りが厳しい時は、入金を増やすだけでなく、出金を抑えることも重要です。
たとえば、次のような支出を見直します。
もちろん、すべての支出を止めれば良いわけではありません。
売上に直結する広告費や、事業継続に必要な外注費まで止めてしまうと、かえって資金繰りが悪化する可能性があります。
大切なのは、「今すぐ必要な支出」と「一時的に止めても事業への影響が小さい支出」を分けることです。
資金繰りが厳しい時は、少額の支出も軽視できません。
数万円の支出を複数止めるだけでも、取引先への支払い資金を一部確保できることがあります。
ただし、支出削減だけで乗り切ろうとすると、必要な投資まで止めてしまい、売上低下につながる可能性もあります。
不要な支出を止める時も、今後の売上や事業継続への影響を考えながら判断しましょう。
取引先への支払い資金を確保する方法として、ビジネスローンを検討する方法もあります。
ビジネスローンは、銀行融資よりも審査スピードが早いものが多く、急ぎの支払い資金を確保したい時に選択肢になります。
ただし、一般的な銀行融資と比べると金利が高くなる傾向があります。
そのため、ビジネスローンを利用する場合は、目の前の支払いを乗り切れるかだけでなく、返済できる見込みがあるかを確認することが重要です。
資金繰りが一時的にズレているだけで、今後の入金予定が明確にある場合は、短期的な資金調達として検討できるケースもあります。
一方で、毎月のように資金が足りない状態でビジネスローンを利用すると、返済負担が増えて資金繰りがさらに厳しくなる可能性があります。
利用する場合は、借入額、返済期間、金利、毎月の返済額を確認し、翌月以降の資金繰りに無理がないかを必ず確認しましょう。
売掛金や在庫などの資産がある場合は、ABLを検討する方法もあります。
ABLとは、売掛金や在庫、機械設備などの事業資産を担保にして資金調達する方法です。
不動産担保がない会社でも、売掛金や在庫などの事業資産を活用できる可能性があります。
特に、売上はあるものの入金までの期間が長い会社や、在庫を多く抱えている会社では、資金調達の選択肢になることがあります。
ただし、ABLはすぐに利用できるとは限りません。
担保となる売掛金や在庫の内容、取引先の信用力、資産の管理状況などを確認されるため、審査や手続きに一定の時間がかかることがあります。
また、すべての金融機関がABLに積極的とは限りません。
そのため、支払い期日が目前に迫っている場合は、ABLだけで対応しようとするのではなく、他の資金確保策とあわせて検討する必要があります。
ビジネスローンやABLが難しい場合、請求書カード払いやファクタリングを検討する方法もあります。
請求書カード払いは、取引先への支払いをカード決済に切り替えることで、実際に現金が出ていくタイミングを後ろ倒しする方法です。
一方、ファクタリングは、入金予定の売掛金を早期に現金化する方法です。
つまり、請求書カード払いは「支払いを遅らせる方法」、ファクタリングは「入金を早める方法」です。
どちらも資金繰り対策として使える場合がありますが、手数料が発生します。
そのため、手数料を支払ってでも利用する意味があるか、翌月以降の資金繰りに無理がないかを確認する必要があります。
特に、毎月のように資金が足りない状態で使い続けると、手数料負担によって資金繰りがさらに悪化する可能性があります。
請求書カード払いやファクタリングは、あくまで一時的な資金繰り対策として検討しましょう。
慢性的に資金が足りない場合は、サービスを利用する前に、赤字の原因や支払い過多の原因を確認することが重要です。
取引先への支払いができない原因が、銀行借入の返済が厳しくなっていることにある場合は、リスケジュールも検討する必要があります。
リスケジュールとは、金融機関に相談して、借入金の返済額を一時的に減額してもらうことです。
毎月の元金返済が厳しく、取引先への支払い資金を圧迫している場合、返済額を減らすことで資金繰りが改善する可能性があります。
たとえば、毎月200万円の元金返済をしている会社が、リスケジュールによって元金返済を一時的に0円または少額にできれば、その分を仕入先や外注先への支払いに回せる場合があります。
もちろん、リスケジュールをすればすべて解決するわけではありません。
金融機関への説明資料や資金繰り表、今後の改善計画が必要になります。
また、新規融資を受けにくくなる可能性もあります。
しかし、取引先への支払いが止まりそうな状況で、無理に返済を続けて資金繰りが崩れるくらいなら、早めに金融機関へ相談した方が良いケースもあります。
特に、事業自体に利益が出ているにもかかわらず、借入返済が厳しくて資金繰りが苦しい場合は、リスケジュールによって事業を立て直せる可能性があります。
取引先への支払いができない状態になる前に、金融機関への返済負担も含めて資金繰りを見直しましょう。
取引先への支払いが一時的に遅れているだけであれば、売掛金の回収、支出の見直し、資金調達などで乗り切れることもあります。
しかし、支払いができない状態が何度も続いている場合は、目の前の支払いだけを何とかしても根本的な解決にはなりません。
今月の支払いを何とか乗り切っても、翌月また同じように資金が足りなくなる可能性があります。
その場合は、資金繰り全体を見直す必要があります。
特に確認すべきなのは、次の3つです。
それぞれ解説します。
支払いができない状態が続く場合は、資金繰り表で今後の入出金を確認しましょう。
資金繰り表を作ると、いつ、いくら入金があり、いつ、いくら支払いがあるのかを整理できます。
頭の中だけで資金繰りを考えていると、「何となく足りない」「何となく厳しい」という状態になりがちです。
しかし、それでは具体的な対策を立てることができません。
資金繰り表を作れば、次のようなことが分かります。
取引先に支払いを待ってもらう場合も、資金繰り表があると説明しやすくなります。
「資金繰りが厳しいので待ってください」と言うだけでは、取引先も判断できません。
しかし、「〇日に〇万円の入金予定があるため、その後に〇万円支払います」と説明できれば、相手も検討しやすくなります。
金融機関にリスケジュールを相談する場合も、資金繰り表は重要です。
今後の入出金を整理せずに相談しても、金融機関は判断できません。
取引先への支払いができない状態になった時こそ、資金繰り表を作成し、現状を数字で把握することが大切です。
次に、なぜ取引先への支払いができない状態になっているのかを確認します。
支払いができない原因は、会社によって異なります。
たとえば、次のような原因が考えられます。
一時的に売掛金の入金が遅れただけであれば、入金タイミングの調整で改善する可能性があります。
しかし、赤字受注が続いていたり、固定費が高すぎたり、借入返済が厳しかったりする場合は、資金調達だけでは根本的な解決になりません。
資金繰りが厳しい会社ほど、目の前の支払いに追われてしまい、原因分析が後回しになりがちです。
しかし、原因を把握しないまま資金調達をしても、数か月後に同じ問題が起こる可能性があります。
取引先への支払いができない状態が続いているなら、単に「資金が足りない」と考えるのではなく、なぜ資金が足りないのかを確認する必要があります。
資金繰り全体を見直した結果、事業継続が可能かどうかも検討する必要があります。
取引先への支払いができない状態でも、必ずしもすぐに廃業や破産を選ぶ必要はありません。
事業自体に利益が出ている場合や、借入返済を見直せば資金繰りが改善する場合は、事業を継続できる可能性があります。
一方で、売上が大きく減少している、赤字が続いている、今後の改善見込みがない、取引先への支払い遅延が広がっている場合は、廃業や破産を含めた選択肢も検討する必要があります。
大切なのは、感情だけで判断しないことです。
「もうダメだ」と思っても、現状を整理してみると事業継続の道が残っていることもあります。
反対に、「まだ何とかなる」と思って無理に続けた結果、負債が増え、取引先や家族への影響が大きくなることもあります。
そのため、支払いができない状態が続く場合は、次のような選択肢を冷静に検討しましょう。
事業継続を目指す場合も、廃業や破産を検討する場合も、まず必要なのは現状把握です。
資金繰り表、損益、借入金、未払い金、売掛金、在庫、個人保証の有無などを整理しなければ、正しい判断はできません。
取引先への支払いができない状態は、会社にとって大きな危機です。
しかし、早い段階で現状を整理し、対応策を検討すれば、選択肢が残っていることもあります。
目の前の支払いだけに追われるのではなく、資金繰り全体を見直し、今後どうするのかを冷静に判断しましょう。
取引先に支払いができない時は、まず現状を整理することが重要です。
手元資金が足りない状態で、金額の大きい取引先から順番に払っていけばよいとは限りません。
実務上は、数万円〜数十万円の小口債権者ほど強く督促してくるケースもあります。
そのため、支払いの優先順位を決める時は、債権額の大きさだけでなく、取引先との関係性、今後の事業への影響、相手の回収姿勢なども含めて判断する必要があります。
また、支払いが遅れる可能性があるなら、できるだけ早く取引先に連絡しましょう。
説明責任を果たさずに逃げたり、根拠のない支払約束をしたりすると、取引先との信頼関係は一気に悪化します。
支払い資金を確保する方法としては、売掛金の回収、支出の見直し、ビジネスローン、ABL、請求書カード払い、ファクタリング、リスケジュールなどがあります。
ただし、資金調達だけで目の前の支払いを乗り切っても、資金繰りが改善するとは限りません。
支払いができない状態が続いている場合は、資金繰り表を作成し、なぜ資金が足りないのかを確認する必要があります。
取引先への支払いができない状態は、会社にとって大きな危機です。
しかし、早めに現状を整理し、支払いの優先順位を決め、取引先に誠実に対応すれば、選択肢が残っていることもあります。
目の前の支払いだけに追われず、資金繰り全体を見直しながら、今後の対応を冷静に判断しましょう。