
銀行から手形貸付で融資を受けているけど、期日に返済できない。
「売掛金の入金があるから返済できる」と伝えて融資を受けたのに、入金されたお金は全て資金繰りに使ってしまい、返済財源は正直全くない…。
このままだと不渡りを起こして倒産するかもしれない。どうすればいいかのか教えて欲しい。
この記事では、こういった疑問にお答えします。
手形貸付が返済できなければ書換え(ジャンプ)を依頼すればOK【結論】


銀行から手形貸付で短期の融資を受けて、返済できないことが確実となった場合、第一に考えるべきことは手形不渡りを回避する事です。
理由は、手形貸付が期日に返済できないと「手形不渡り」という扱いとなり、「手形事故を起こした企業」という情報が金融機関同士で共有され、今後の融資が難しくなるからです。
そのため、手形貸付の返済ができない事が判明したら、「手形貸付の返済が難しいので、書換え(ジャンプ)て欲しい」と依頼しに行きましょう。
銀行にそのような事を依頼して応じてくれるのか?という疑問があるかもしれませんが、結論から言うと、銀行は手形貸付の期日一括返済ができない企業に対して、返済期日を書換えるという対応をします。
書換え(ジャンプ)すれば返済期日を延ばすことが可能
例えば、期日3ヵ月の手形貸付で融資を受けていた場合、書換えを依頼し、応諾してもらうことができれば返済期日を3ヵ月伸ばしてもらえます。
ですので、手形貸付を期日どおり返済できない事が判明したら、高金利の借入を考える前に、銀行に書換えを依頼するようにしましょう。
銀行は手形の書換えに応じてくれる?
基本的には応じてくれるのですが、断られることもありますので、ご注意ください。
手形の書換えを断られる理由
手形貸付は、売上の入金が確実視されているということが前提で実行される融資なので、銀行からすると「売上の入金が入るまでの短期間の融資」として、手形融資を実行します。
手形貸付が返済されないということは、売上の入金が資金繰りに使われてしまったことを意味しますから、銀行からの信用を失うのは間違いありません。
もともと「運転資金」として融資を受けたのであれば、資金繰りに使っても何の問題もありませんが、繰り返しになりますが、
手形貸付は売上の入金がされるまでの「つなぎ資金」として借りた性質のものです。
銀行の立場からすると、「入金があれば返済される」という前提で融資したものが、いざ、返済日が近づいてきたら「やっぱり返済できません」では、逆の立場で考えれば受け入れてもらうのは難しい部分もあります。
このことを踏まえた上で、もし、銀行が手形融資の書換えに応じないときは、次のように対処しましょう。
銀行に手形貸付の書換えを断られた場合の対処法1つ


銀行に手形貸付の書換えを断られた時の対処法は下記1つです。
- 書換えの必要性を解きながら粘り強く依頼する
上記のとおりです。
書換えの必要性を解きながら粘り強く依頼する
これを言うと、「何の対処法になってない」と感じるかもしれませんが、実際のところ、最も有効な方法です。
まずは正直に「資金繰りに使ってしまい、返済できなくなった」という事実を伝え、そのうえで「今後はこのような事が起こらないよう、資金管理を徹底する」という事を伝えましょう。
ここで誤魔化そうとしたり、嘘をついても後々の取引に悪影響を及ぼすだけですから、なぜ、返済できなくなったのか、正直に伝え、断られても粘り強く交渉するようにしましょう。
銀行に手形の書換えを依頼する時のよくある疑問


銀行に手形の書換えを依頼する時のよくある疑問を4つ紹介します。
- 書換えを断られたら不渡りを起こしますよね?
- 書換えを依頼したら、今後の手形貸付は不可能ですよね?
- 仮に何回か書換えに応じてくれたとしても、いつかは拒否されますよね?
- 手形貸付は期日一括返済だけど分割で返済する事はできないですよね?
上記のとおりです。
書換えを断られたら不渡りを起こしますよね?
手続き上はそうなりますが、実は、銀行が率先して不渡りを起こすようなことは基本的にはあり得ません。
「書換えの必要性を解きながら粘り強く依頼する」という項目で粘り強く依頼するとお伝えしましたが、
粘り強く交渉しなくても、返済期日が近づいてくると、銀行の方から「今回は書換えという形で対応しますが、今回だけですよ!」といった主旨の連絡をしてくる場合が殆どだからです。
とはいえ、絶対に銀行から連絡してもらえるという訳でもありませんので、必ず、こちらから誠意をもって書換えを依頼するようにしましょう。
書換えを依頼したら、今後の手形貸付は不可能ですよね?
一概にそうとも言い切れません。
なぜなら、筆者のお客様で手形貸付の書換えを依頼したにもかかわらず、その数週間後には新規で手形貸付を実行してもらったという事例がよくあるからです。
具体的には下記のようなイメージです。
- 2月中旬の時点で手貸の返済が不可能な事が判明し、銀行に書換えを依頼した
- 返済期日3月15日の手形貸付の返済期日を3ヵ月後の6月15日に伸ばしてもらった
- 4月に入り、1500万円の仕事を受注したが、原材料の仕入れ費用が500万円程足らない
- 銀行に相談したら、新たに手形貸付500万(貸付期間3ヵ月)を受ける事ができた。
ちなみに、こういったケースは最近でもよく目にしますので、書換えを依頼したからといって、手形貸付が必ずしも不可能になる訳ではないといえます。
仮に何回か書換えに応じてくれたとしても、いつかは拒否されますよね?
筆者のお客様のケースで言えば、書換えを拒否されて不渡りを起こしたというケースは、2009年から現在まで見たことがありません。
基本的に、何度も書換えに応じてくれます。
手形貸付の書換えの対応方針は支店長が代わると変わることがある
ちなみに、手形貸付の書換えの対応方針は、支店長が代わるタイミングで対応が変わるというケースはよく見かけます。
具体的には下記ようなイメージです。
- 前々任の支店長 → 返済期日になると「今度こそ返済して欲しい」、「いったん、手形貸付を返済して下さい。返済してもらえれば同額を新規で出しますから」 ← これに応じてしまうと出ない場合がほとんど(いわゆる「貸しはがし」)
- 前任の支店長 → 前任と方針が180度異なり「ウチは利息だけ払って貰えれば全然問題無いですよ~(笑)」となる。
- 新たな(現任)支店長 → 「前任の支店長がどのような事を御社に伝えたのか分かりかねますが、期日通り返済して欲しい。」
このように、対応方針がコロコロ変わったりします。
とはいえ、何だかんだで応じてくれますので、返済できないから「不渡り確実」などと思い込むのは止めましょう。
手形貸付は期日一括返済だけど分割で返済する事はできないですよね?
実務上、「内入れ」という形で対応してくれます。
例えば、500万円の手形貸付で融資を受けていて、「500万円の一括返済は不可能だけど、200万円ぐらいなら返済できそう」というケースがあるとします。
このような場合、手形は返却されませんが、手形に次の3つが記載された内入れ表が添付されます。
- 内入れされた日付
- 内入れ額
- 内入れ後の手形貸付残高
同時に、内入れ金領収書や計算書が発行されます。
手形貸付の書換えを繰り返すと融資が受け難くなるので注意


手形貸付で融資を受けて、書換えを何度も繰り返していると、長期の運転資金の融資は受け難くなりますので注意しましょう。
業績が上がり、財務内容が良くなれば書換えをしても長期の運転資金を融資してくれる事もありますが、横這い、あるいは業績が悪化すると融資は受け難くなりますので、書換えを繰り返すことが無いよう、注意しましょう。
ある程度、資金的に余裕が出てきたら内入れした方が良いです。
まとめ
以上、手形貸付が期日に返済できない時の対処法や、よくある疑問を解説しました。
おわり。