たまに、ではありますが、粉飾決算で資金調達している方からご相談依頼を受けることがあります。
粉飾している方から相談を受ける際、決算書を拝見させて頂きながらヒアリングしていると、「実は、数字を調整している科目があります…。」と、少し気まずそうに切り出されます。
ただ、だからといって、こちらとしても色眼鏡で見るような事は一切ありません。粉飾をしていると打ち明けられても「あっ、そうなんですか。」と、軽く受け流すだけです。
だって、ちょっとした数字の調整ぐらい、どこの会社でもやってる事ですから(もちろん、真面目に決算している会社はたくさんあります)そこで、「粉飾なんて・・・」などと言うつもりは全くないです。
こんな、事なかれ主義のような私ですが、粉飾している方で嫌だと思う事が1点だけあります。この仕事を始めた時から嫌だと思っていたことです。
それは、粉飾を追及された時、「人のせいにする経営者がいる」という事です。
粉飾決算は自己責任、人のせいにするのは・・・。
粉飾している方は、2通りのタイプに分かれます。
一つは、自己責任というのを理解していて、追及されても、「自分でやった」と言うタイプ。
もう一つは、「税理士に言われてやった」とか「コンサルタントに言われてやった」と、他人に罪を擦り付けるタイプです。
自分でやったというタイプの方は、金融機関から鬼のように突っ込まれても、一貫して「私が指示しました」と正直に打ち明けるので、見ていて非常に好感がもてます。
中小企業の決算・税務申告は、税理士や会計事務所が関与しているケースがほとんどですから、実際に数字を調整しているのは、経営者や経理ではなく、第三者である専門家が数字を調整している事がほとんどです。
ですから、厳密にいえば、粉飾に関わった専門家の方々も「共犯」という事になるのですが、自分でやったと言うタイプの方は、専門家の方に罪を擦り付けるような事はせずに、金融機関から突っ込まれても、「私が全て指示した」と、ご自身で責任を取ろうとします。
こういう方は傍からみていても、非常に好感がもてます。
「この人は漢だ!」などと思ったりします。
でも、他人に罪を擦り付けるタイプの方は好感がもてません。というより、個人的に、最も嫌いなタイプです。
こういうタイプの方が粉飾を追及されると、必ずといっていいほど、下記のような言い訳をします。
- 会計事務所に指導受けた
- 顧問税理士に言われてやった
- コンサルタントに言われてやった
まるで、自分に落ち度は全くないと言わんばかりです。こういう方を見ると、私は嫌悪感を抱いてしまいます。
粉飾を追及された時に、人のせいにするのは、傍から見ていてかなりみっともないです。金融機関からの信用を失うばかりか、それ以外の方々からも信用を失います。
粉飾決算は自己責任です。
人のせいにしてはいけないと、個人的には強く思っています。
ただ、先ほどお伝えしたように、「全部自分の責任だ」と、一貫して言う方は好感が持てます。もちろん、粉飾は悪い事だと思いますが、悪いことと分かってて、自己責任で粉飾をしている方は、信用できます。
筆者の義父も、金融機関対策として多少数字を調整していた事もありましたが、そこの部分に関しては「先生に数字を調整してくれと俺が頼んだんだ!」と、一貫して主張していました。
会社が倒産した時、義父が債権者の対応をしている姿を近くで見ていて、
「なんだか頼りない人だな」
「大丈夫かこの人?」
等と思ってしまったシーンをたくさん見てきましたが、粉飾の部分に関しては、金融機関に対して一貫して自己責任を主張していたので、そこは非常に好感を持てました。
ここで、やれ「会計事務所が」とか、「税理士が」とか言ってたら、ちょっと軽蔑していたかもしれません。まあ、そんな事言ってたら、妻の家族とはいえ、見限っていたと思います。
粉飾決算で融資を受けるのはその人の勝手ですが、バレた時に、人のせいにするのはちょっと筋が違うのでは・・・と思う次第です。
こういう方は、そんなに多くは見かけませんが、たまに、こういう方を見てしまうと残念な気分になってしまいます・・。