金融機関の支店長に「リスケジュールって何ですか?」と言われた話【実話】

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このお話は2009年の秋頃、クライアント様のお手伝いで取引行へリスケジュールのお願いに回った時のお話です。

まだ、「中小企業金融円滑化法」という法律が出てくる以前のお話です。

ちなみに、リスケジュールの詳細は「【銀行融資】リスケジュールで返済額を見直して資金繰り改善【基礎知識】」をどうぞ。

好きなところから読めます

約定返済を続ける事は不可能なので、取引行にリスケジュールの依頼することに

2009年の夏ごろ、筆者のブログを読んで連絡してくださった企業がありました。

特定されない範囲内でクライアント企業の概要を記載すると次のとおりです。

  • 所在地:東北地方
  • 業種:小売業
  • 年商:10億円前後
  • 負債総額:4億5千万円前後
  • 取引金融機関:5行(メガバンク、第一地銀、第二地銀、信用金庫、日本政策金融公庫)

最盛期の年商は20億を超えていた時期もありましたが、同業他社との競争が激化し、売上は年々減少し、3年の間に売上は半分に落ちてしまいました。

売上が落ち続けている3年の間、メインバンクは折返しの融資に応じてくれていましたが、2009年の夏、メインバンクから「折返しの融資は稟議に通らなかった」と言われ、融資を打ち切られてしまいました。

約定返済を続けていれば2カ月後に資金ショートは不可避

このまま約定返済を続けていれば、運転資金は2ヵ月で底をつき、資金ショートを起こして会社は倒産します。

ただ、元本返済さえ無くなれば資金繰りは何とかやりくりできるようになりますので、元本返済を猶予してもらうために、融資額の大きいところから順番に社長と一緒にリスケジュールの依頼に周りました。

現在と異なる2009年のリスケジュール環境

2009年のリスケジュール環境は、現在のように、

「リスケジュールして下さい!」
「分かりました」

という感じですんなり応諾してくれるほど簡単ではなく、依頼しても2~3回ぐらいは断られるような感じでした(都心のメガバンクはそうでも無かったです)。

一応、最終的にはリスケジュールを応諾してくれるのですが、この頃は「とりあえず入り口で断られる」というケースが今現在と比較すると圧倒的に多かったのを覚えています。

取引金融機関にリスケジュールの依頼にまわった時のこと

借入残高の多い順にリスケジュールを依頼するために社長と共に銀行に訪問し、最後の5行目となる地元の信用金庫にリスケジュールのお願いに行ったところ、某県信用金庫の支店長から耳を疑うような事を聞かれました。

信金支店長

リスケジュールって何ですか?
条件変更なんてできるんですか?

筆者

はい?
いえ、あの…リスケジュール。
つまり元本返済の猶予を頂きたく、相談に来たのですが…。

信金支店長

「リスケジュール」なんて聞いたことが無いですね。
本当にそんなことをしている金融機関があるのですか?

筆者

…。

信用金庫の支店長の発言は想定外のことだったので、数秒、思考停止しました。

信用金庫以外は口頭ベースでリスケジュールの応諾を頂いていたので、社長と私は「他行さんが応諾してくれているから、信金さんも応諾してくれる」と、何の疑いもなくそのように思い込んでいました。

社長はどう思っているのかと思い、ふと横を見たら、社長も目が点になってました。

信用金庫の支店長が「リスケジュールなんて知らない」という想定外の発言

信用金庫に訪問する前までは、他行からリスケジュールの応諾を頂いていたので、「金融機関と揉めることなくスムーズにリスケジュールの応諾を頂く事ができた」と、社長と楽観していました。

それなのに、信用金庫に来たとたん、まさかの「リスケジュールなんて知らない」発言ですから、私は腹の中で「この支店長、めちゃくちゃ性格が悪いな」と思いました。

人が良さそうな顔をしてるけど、ワザとすっとぼけて、こちらを困らせてるんじゃないのか?と本気で思いました。

信用金庫の相談が終えた後、社長と二人で、「あの支店長、人がよさそうな顔をしてますけど、とんだタヌキですね。」なんて話をしながら帰ったのを覚えてます。

準メインであるメガバンクが疑惑の目を向ける

この出来事があってから、1ヵ月半ぐらい経った頃でしょうか。

信用金庫以外の金融機関はリスケジュールするとの足並みが揃ったにも関わらず、信用金庫だけがいつまで経っても返事が無いので、メガバンクの担当者がかなりイラついた感じで、「現状を報告して欲しい!」と私に聞いてきた事がありました。

メガバンク担当者

信金さんの返事はどうなんですか?
信金さん以外、プロラタ返済で納得しているのに、まさか、信金だけ約定で返済するつもりじゃないでしょうね?

筆者

いえ、それがですね…、
信金の支店長が、リスケジュールを知らないと言ってまして、「本部に確認をする」と言ったきり、1ヶ月近く返事を頂いていないのです。

メガバンク担当者

は?そんなワケ無いでしょ。
リスケジュールを知らない?

筆者

ええ、そうみたいです。
ホントかどうか分かりませんが。
社長と信用金庫に伺った際、ハッキリそのようにおっしゃってました。

メガバンク担当者

いやいや、そんな事あるわけ無いでしょ(笑)

筆者

いえ、別にウケ狙いで言ってるんじゃないですよ。
ホントにそのように言われたんですよ。

メガバンク担当者

その人は支店長なんでしょ?

筆者

そうです、支店長です。
名刺も頂いてますし、名刺にも「支店長」と書いてありますよ。

メガバンクの担当者が全く信じてくれないので、支店長の名刺を見せました。

このやり取りを見ていた、担当者の部下の方も、

部下

マジっすか、あり得ないんですけど…。

と小さな声でボソッとつぶやいてました。

担当者の部下の方が小さな声でつぶやいた後、メガバンクの担当者から、少々怒り気味の口調で次のように言われました。

メガバンク担当者

いや、申し訳ないけど、行内でそんな話をしても誰も信じないし、本部に稟議の上げようが無いから、信金の支店長に直接話をさせて欲しい。

社長と私も、こんな事でいちいち「ウソじゃないです!」と力説するのもアホらしかったので、ある作戦を立てました。

メガバンクの担当者と信用金庫の支店長をバッティングさせる作戦を立てる

作戦の内容は、支店長に会社に来てもらい、同じ日の同じぐらいの時間にメガバンクの担当者にも来てもらって、ワザとバッティングさせるという作戦です。

概要は次のとおりです。

  • 14時に信用金庫の支店長に会社に来てもらうようアポを取る。
  • 14時15分ぐらいにメガバンク担当者に「営業のついでに来た」とさりげない感じで来てもらう。
  • 3者で軽く雑談をして、その後にメガバンク担当者に「リスケジュール」の話を切り出してもらう

ちなみに、このような作戦を立てたのには理由があります。

他にも取引行があり、しかもメインバンクを差し置いて2行だけでリスケジュールに関する話をすることになるので、「リスケジュールの件でメインバンク担当者が直接支店長に話を聞きたいそうです。」と呼び出すのは他金融機関に知れたら、抜け駆けしようと打ち合わせをしていると非難されかねません。

なので、「たまたま訪問日時がバッティングした」という形にしました。

作戦当日、支店長とメガバンク担当者をバッティングさせることに成功

約束の14時に信用金庫の支店長が訪問してきました。

社長は会社の業況を報告と、業界の動向についていろいろ説明していました。

15分ぐらい会社の業況を説明して、そろそろリスケジュールの話に持ち込もうかという時に、タイミングよくメガバンク担当者が「営業で近くを通りかかったので、挨拶に来ました!」と来てくれたので、うまくバッティングさせる事に成功しました。

メガバンク担当者と信用金庫の支店長は名刺交換して、軽い雑談をしていました後、メガバンク担当者はリスケジュールの話を切り出しました。

メガバンク担当者

いや~、そういえば先日、社長から借入金の返済方法について相談があると言われたので、当行まで足を運んでいただいたのですが、それが、条件変更のお話だったんですよ。
当行もこれ以上の決済は下りないので、条件変更が妥当なのかなと検討している最中です。
ちなみに御行ではどうですか?

信金支店長

M銀行さんは本当に条件変更されるのですか?

メガバンク担当者

ええ、実はすでに本部に稟議が通ってますので、当行はそのように致しますが、御行は?

信金支店長

いえ、私もこのような事は初めての事なので、本当にそのような事ができるのか、現在、本店に問い合わせているところなのです。

メガバンク担当者

なるほど。そうなんですね。

信金支店長

明日、明後日ぐらいには本部から回答がくると思います。
何分、当支店では初めての事なので、どのように対応したら良いのか分らないのです。

メガバンク担当者

なるほど。そうですか。
初めてでしたらそうなりますよね。

信金支店長

M銀行さんは応諾するんですよね。
その旨、当行の本部に伝えても宜しいでしょうか。

メガバンク担当者

ええ、決定事項ですし、全然構いませんよ。

信金支店長

ありがとうございます。
すいません、そろそろ戻らなければならないので、これで失礼致します。

メガバンク担当者

こちらこそ、お忙しい中引き留めてしまい、申し訳ありませんでした。

次の訪問先があるのかどうか分りませんが、信金の支店長はそそくさと帰っていきました。

メガバンクの担当者の方々が、信金支店長が事務所から出て行ったのを確認すると、

メガバンク担当者

あの人、本当に知らなそうだったな。

部下

ホント、そんな感じでしたね~。

と、話しながら帰って行きました。

今でこそ笑い話で済みますが、まだまだリスケジュールという言葉が今ほど浸透していない時に、こんな出来事があったのです。

おわりに

ちなみに、この話を金融機関の方や金融機関出身のコンサルタントの方にすると、全く信じてもらえません。

どんなに力説しても、「そんな人見たこと無いな」と一蹴されます。

でも、実話なんですよね…。

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