【銀行融資】リスケジュールで返済額を見直して資金繰り改善【基礎知識】

銀行に融資の相談をしたら断られた。このままだと借入金の返済もできなくなるし、取引先や給料の支払いが難しくなる。

毎月の元本返済額が多くて、借入返済の負担が大きい。元本返済さえなければ資金繰りは普通に回るのに、元本返済の負担が大きくて常に資金繰りが厳しい。

ネットで調べたら銀行にリスケジュールを依頼すると元本返済を猶予してもらえるみたいだし、前向きに検討したいからリスケジュールについて詳しく知りたい。

この記事では、こういった疑問にお答えします。

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銀行融資の「リスケジュール」とは

「リスケジュール」とは、返済条件の緩和・返済条件の変更のことをいいます。

具体的には、借入金の返済が苦しくなった時に、一定期間元本返済を減額・猶予(金利のみ)してもらうことをいいます

毎月のキャッシュフローよりも元本返済の金額が多い状態が続いてしまえば、資金調達しない限り、キャッシュは減少し、将来的に資金ショートを起こしてしまいます。

こうした状況を回避するため、返済可能な範囲で元本返済を猶予してもらう手続きのことをリスケジュールといいます。

「リスケ」と略して呼ばれる事が多いです。

リスケジュールは資金繰り改善の最終手段

銀行にリスケジュールを依頼すると元本返済は猶予してもらう事ができるので、資金繰りは改善します。

しかし、リスケジュールしてしまうと、今後の銀行融資は難しくなってしまいますので、リスケジュールは銀行融資ができなくなってしまった時の最終手段といえます。

リスケジュールのメリットとデメリット

銀行融資をリスケジュールするメリット・デメリットを解説【基礎知識】」という記事でメリット・デメリットについて詳しく解説していますが、概要は以下の通りです。

メリットデメリット
元本返済が猶予されるので資金繰りが改善される
倒産リスクが下がる
延滞扱いにならない
リスケジュールすると新規融資が難しくなる
リスケジュール交渉時の経営者の負担が大きい

銀行にリスケジュールを依頼する時のポイント6つ

銀行にリスケジュールを依頼する時のポイントは下記6つです。

  • リスケジュールの依頼はメインバンクから
  • 嘘はつかない
  • 金融機関にリスケジュールを依頼する内容は平等にすること
  • 他の金融機関にも依頼していることを伝える
  • できることとできないことをはっきり伝える
  • 手元資金は月商の1ヶ月分は確保しておく

上記のとおりです。

リスケジュールの依頼はメインバンクから

銀行にリスケジュールを依頼する際は、メインバンクから依頼するようにしましょう。

メインバンクには「当行が〇社のメインバンク」という自負があるので、最初にリスケジュールの依頼をしたのがサブ行(他行)という事実が後で発覚するとメインバンクの心証は悪くなります。

銀行は数字しか見ないと思われがちですが、感情で動く部分もありますので、今後のリスケジュール交渉をスムーズに進めるためにもこうした配慮は必要です。

ちなみに、複数の金融機関と取引していると、メインバンクだと思って相談したら「当行はメインバンクではない」と言われる事があります。

もし、このような状況に遭遇した場合、「【リスケジュール】メインバンクはどう判断するの?判断基準や融資残高が同じ場合も合わせて解説」という記事でメインバンクの判断基準を解説していますので、是非どうぞ。

嘘はつかない

リスケジュールをお願いする際、現状を正直に伝えるようにしましょう。

嘘をついた事が後でバレると心証が悪くなるばかりか、リスケジュール交渉自体を打ち切られる可能性もありますので、現状を正直に伝えましょう。

  • 大口の取引先に取引を打ち切られ、売上が大幅に減少した
  • 取引先が倒産して売掛金が引っ掛かってしまった
  • 決算書上、売掛金や在庫が多めに計上されているけど、実際は3分の1も無い
  • 他行にリスケジュールを依頼したら難色を示された

等々、銀行に言いにくい情報はいろいろあると思いますが、リスケジュールを依頼する時は全て正直に伝えるようにしましょう。

ちなみに、取引先が倒産した時の対処法については「取引先が倒産して売掛金が回収不能!連鎖倒産を回避する資金繰りと制度融資を紹介」をどうぞ。

金融機関にお願いする内容は平等にすること

リスケジュールは全行一律同条件が基本です。

例えば、メインバンクとは創業から付き合いがあるからといって、メインバンクだけ返済して、サブ行はリスケジュールするということはできません。

  • メインバンク → 約定通り返済する
  • サブ行 → リスケジュール

以下のように、全ての取引行が一律同条件でリスケジュールしなければなりません。

  • メインバンク → 1月の返済分からリスケジュール
  • サブ行 → 1月の返済分からリスケジュール

他の金融機関にも依頼していることを伝える

「リスケジュールの依頼はメインバンクから」とお伝えしましたが、メインバンクに依頼した後、サブ行に連絡した時に「メインさんにはリスケジュールして欲しいと依頼しました」といった感じで、他の金融機関にも依頼していることを伝えるようにしましょう。

取引行が沢山ある場合は、「メインさんには伝えましたが、C銀行さんと政策公庫さんはこの後に連絡します」というように、リスケジュールの依頼状況をすべて伝えるようにしましょう。

政策公庫の借入をリスケジュールする方法は「日本政策金融公庫の融資をリスケする方法を3つの手順で解説」をどうぞ。

できる事とできない事をはっきり伝える

銀行にリスケを拒否された!約定返済するしかない?【原因と対処法を解説】」という記事でも解説しているとおり、リスケジュールを依頼した時にリスケジュール応諾の条件として金利アップ・追加担保の要請をしてくる事があります。

また、「【リスケジュール】銀行から「役員報酬を下げろ」と言われたけど下げるべき?【明確な答えはないです】」という記事でも解説しているとおり、役員報酬を減額するよう言われる事もあります。

この時、「借りたお金を返済できないこちらが悪いのだから仕方がない」と思い込み、不利な条件を呑んでしまう方がいますが、「こちらが悪い」と考える必要はありません。

銀行はボランティアで融資しているのではなく、融資したお金に対して利息を取る、ビジネスで融資をしている訳です。

それに、リスケジュールしても、リスケジュール期間が終われば普通に返済することになるのですから、「こちらが悪い」などと思う必要はありません。

ですので、不利な条件を提示されても、安易に応諾しないようにしましょう。できない事はハッキリと「できません!」という事は必要です。

手元資金は月商の1ヶ月分は確保しておく

ギリギリまで返済を頑張ってしまい、手元資金が枯渇した状態でリスケジュールを依頼するようでは、資金ショートして倒産する可能性が出てきます。

ギリギリの資金繰りは危険ですので、必ず、月商の1ヶ月分程度の手元資金を確保した状態でリスケジュールを依頼するようにしましょう。

銀行にリスケジュールを依頼する手順4つ

銀行にリスケジュールを依頼する手順は下記4つです。

  • 手順①:銀行にリスケジュールを依頼する
  • 手順②:事業計画書、資金繰り表の作成
  • 手順③:銀行とリスケジュールの交渉を行う
  • 手順④:リスケジュールを実行する

上記のとおりです。

手順①:銀行にリスケジュールを依頼する

最初はメインバンクにリスケジュールを依頼して、その後はサブ行に連絡します。

複数の金融機関と取引している場合、基本的に融資残高の多い銀行がメインバンクと言えるのですが、融資残高が同じような銀行がある場合、メインバンクの判断が付き難いと思います。

以下の記事でメインバンクの判断基準について解説していますので、参考にして下さい。

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手順②:資金繰り表と経営改善計画書を作成する

現状と将来の資金繰り状況を銀行に理解してもらうために、資金繰り表を作成し、銀行に説明しましょう。

このまま元本返済を続けると、資金調達でもしない限り行き詰ってしまう。という事を理解してもらう必要がありますので、必ず作成するようにしましょう。

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資金繰り表と併せて、経営改善計画書も作成しましょう。

  • 今後どのように経営改善に取り組み、
  • どのように利益を増やし、
  • どのように元本を返済していくか、

ということを経営改善計画書に記載して、銀行に説明しましょう。

手順③:銀行とリスケジュールの交渉を行う

資金繰り表と経営改善計画書を作成したら、銀行とリスケジュール交渉を行います。

「一定期間リスケジュールしてもらう事で、リスケジュール期間中に経営改善を行い、キャッシュフローを改善させることで返済する事が可能となる。」というように、銀行にもメリットがあるという事を理解してもらいましょう。

複数の金融機関と取引している場合は個別に交渉を行います。

ちなみに、複数の銀行と取引していて、リスケジュール交渉が難航しているような場合、取引銀行の担当者が同じ場所に集まって協議する、「バンクミーティング」を行う場合もあります。

以下の記事でバンクミーティングについて詳しく解説していますので、参考にして下さい。

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手順④:リスケジュールを実行する

全ての取引行とのリスケジュールが成立すれば、契約を締結してリスケジュール実行されます。

リスケジュール期間中は元本返済が減額されますので、期間中に経営改善計画書に記載した内容を実行して経営改善を行います。

リスケジュールに関するよくある疑問

最後に、リスケジュールに関するよくある疑問を7つ紹介します。

  • リスケジュールを決断するタイミングはいつ?
  • 銀行はリスケジュールに応じてくれるの?
  • リスケジュールした事実が第三者にバレる?
  • リスケジュール中に融資を受ける事はできる?
  • リスケジュールしても手形を割引いもらえる?
  • リスケジュールを拒否されたらどうすればいい?
  • リスケジュールすると2度と融資を受けれなくなる?

上記のとおりです。

リスケジュールを決断するタイミングはいつ?

取引行に融資を依頼して、全ての銀行に断られたらリスケジュールを決断しましょう。

融資を断られているのに、リスケジュールを決断しないと手元資金はどんどん減少してしまいます。

悩んだところで銀行から融資してもらえませんし、悩んでいる間に返済日はどんどん近づいてきますから、融資を断られた時点ですぐに決断しましょう。

ちなみに、以下の記事でリスケジュールを依頼する具体的なタイミングについて解説しています。是非参考にして下さい。

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銀行はリスケジュールに応じてくれるの?

数年前と違って、現在はリスケジュール依頼して断られるような事は殆どありません。

以下の記事でリスケジュール件数について解説していますが、リスケジュールを依頼して断られる企業は全体の数パーセント程度です。

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余程悪質な事でもしない限り、リスケジュールに応じて貰えますので、そこまで心配しなくてもOKです。

リスケジュールした事実が第三者にバレる?

リスケジュールが第三者にバレるケースは以下の2つです。

  • 経営者が誰かに口外した
  • お金の流れを把握できる立場の社員(経理等)や役員が口外した

これ以外にリスケジュールした事実が第三者にバレることはありません。

銀行員が口外することはありませんし、「【銀行融資】リスケジュールした事実は信用情報機関に登録される?【結論:登録されない】」という記事でも解説していますが、信用情報機関にリスケジュールしたことが登録される訳でもありません。

リスケジュール中に融資を受ける事はできる?

リスケジュールすると基本的に新規融資は難しくなりますが、全く不可能という訳ではありません。

【銀行融資】リスケジュールして融資を受けれなくなったら困る!【借りれない心配は無駄】」という記事でも解説していますが、リスケジュール中でも銀行から融資を受ける事はできたりしますし、リスケジュール中の資金調達を可能にした保証制度もあります。

リスケジュールしても手形を割引いもらえる?

【手形割引】リスケジュールしても銀行は手形を割引いてくれる?【結論:ケースバイケース】」という記事でも解説していますが、リスケジュール中の手形割引はケースバイケースです。

引き続き手形割引を行ってくれる金融機関もあれば、リスケジュールをきっかけに手形割引を断る金融機関もあります。

手形割引ができなくなったら困るという事であれば、前もって割引だけを行う銀行と取引しておくか、あるいは手形割引専門のノンバンクで実績を作っておくと、割引先に困らなくて済みます。

リスケジュールを拒否されたらどうすればいい?

銀行にリスケを拒否された!約定返済するしかない?【原因と対処法を解説】」という記事でも解説しているとおり、銀行にリスケジュールを依頼して拒否される場合があります。

拒否されたからといって、リスケジュールを諦める必要はありません。粘り強く交渉するようにしましょう。

リスケジュールすると約定返済に戻しても融資を受けれなくなる?

約定返済に戻せば再び融資を受ける事ができるようになります。

ただし、概ね1年程度の返済実績が必要となるので、約定返済に戻したからといってすぐに融資を受けれるようになる訳ではありませんので、ご注意ください。

このことについて、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にして下さい。

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まとめ

以上、リスケジュールで返済額を見直して資金繰り改善する方法について解説しました。

おわり。

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