「このご時世、買収資金を何億も出す会社とかあるんですかね」
「中小企業のM&Aなんて、雑誌や本などでよく目にしますけど、買い手とかつくものなんですかね?」
事業再生の看板を見て、私に相談してくる方からよく言われる言葉です。
一方、別の会社の看板を見て、私に連絡してくる方の多くは、
「何か案件が来てませんか?」
「M&Aの予算が年間○億あるので、是非、案件を紹介して下さい。」
「○業の話があれば、すぐに教えて下さい。負債が多ければ事業譲渡で対応できるので、ウチに真っ先に紹介して下さい」
という話が来ます。
M&A仲介事業を始めた頃は、買いも売りも同じぐらいのバランスで話が来ていましたが、最近は買いニーズが多いです。
ウチだけが偏っているのかな?と思い、提携しているパートナーに聞いてみると、同じように「買いニーズが多く、売り案件が少ない」と言います。買いニーズは、企業のM&A担当者や提携パートナーから情報が入ってくるので、売り案件の発掘が今後の課題です。
悩んでいるうちに、話が無くなる事があります。
ある程度の規模の企業から事業再生のご相談を受けると、経営者の方から「いっその事、会社を売却しようか考えてます。」という話をされる事があります。
まあ、資金繰りが厳しくなってくると、この手の話はよく出てくるので、軽く聞き流す事がほとんどです。(実際、売る気なんて無いケースが多いため)
ですから、こういった話が出たら、目の前の資金繰り問題を解決するよう、話を切り替えるのですが、ご相談頂いた企業の内容と、私のところに来ている買い情報にマッチしているような場合、軽くですが、こちらから話を振ったりする事があります。

社長、実はですね、社名は言えませんが、ちょうど御社のような業種、年商規模を探している企業があります。
本当に売る気があるのでしたら、打診してみる事も可能です。
もちろん、最初の段階では社名を伏せます。
概要だけ投げて、相手が興味を持ってきたら、秘密保持契約を締結して、情報開示する事になります。社長、いかがでしょうか。



本当ですか、凄いタイミングですね。
前向きに検討したいと思いますので、数日、お時間を下さい。
すぐには決断できないので。



分かりました。
決断するのにある程度の時間が必要だと思いますから、ひとまずお待ちします。
この時間を下さいというのが、かなりの曲者で、ここで時間をかけていると、話が流れたりすることになります。
時間を掛けて、ようやく「よし、決めた。決断しよう」となった際、買い手の興味が薄れてしまったり、すでに違う企業の買収を済ませ、「今期のM&A予算をすでに使ってしまったので、この案件は縁が無かったという事で。」と、話が無くなるケースは少なくありません。
長年育てた事業を手放すのに、熟考する気持ちも痛いほど理解できるのですが、時間を掛けていると、タイミングを逃してしまうのです。
3日待たせるだけで忘れ去られるケースも
極端な話ですが、3日待たせるだけで、「何の話でしたっけ?」と言われる事もあります。大手企業のM&A担当者ともなると、持ち込まれる案件の数が多いため、いろんな資料に目を通すわけです。
めちゃくちゃ魅力的な案件があれば、ある程度の期間は覚えていてくれますが、あまり時間をかけていると、「何の話でしたっけ?」という事になるのです。
先月の中旬に、同じようなお話をしましたが、時間をかけてしまうと、話が流れてしまいます。


もし、会社の売却を考えた際は、「時間をかけると忘れ去られる」という事を覚えておいた方がよいかと思います。