ご相談内容は年を追うごとに変わりつつあります。
2009年から事業再生コンサルティング業務をスタートしましたが、現在までのご相談内容を振り返ってみると、ご相談内容が年々変わりつつあることを実感します。
下記グラフは年度毎の主なご相談内容を示したものです。
2009年にこの仕事を始めた時は、銀行返済に関するご相談が殆どでした。
それでは、年度毎のご相談内容を見ていきたいと思います。

ご相談内容の移り変わり
2009年5月から2009年12月までのご相談内容
私が「事業再生コンサルタント」という看板を出したのは2009年5月です。この頃は「リスケジュール」という言葉があまりメジャーではありませんでした。
今でこそ「リスケ」と言うだけで伝わりますが、この頃に「リスケ」というと、「リスケって何ですか?」という回答が返ってくることが殆どでした。
この頃のご相談内容の多くは、
- 銀行からの借入金の返済ができない。どうしたらよいか。
というご相談内容が殆どでした。
2009年といえば、金融円滑化法が施行された年です(12月4日から施行)。
2010年の主なご相談内容
2010年に入ってから、テレビ・新聞・ネット等のニュースで「条件変更(リスケジュール)」という言葉が頻繁に露出されるようになり、リスケジュールという言葉が広く周知されるようになりました。
ただ、「実際にリスケジュールを申請すると銀行はすんなり応諾してくれるのか?」というと、都心と地方での温度差を感じる部分が多々ありました。
例えば、都内の事業者が銀行にリスケジュールを申請すると、比較的すんなり応諾してくれるケースが殆どだったのですが、地方の場合、「すぐには認められない」「資金繰りに余力があるから本当に困ったときに再度相談して欲しい」等といって、リスケジュールを引き伸ばそうとしたり、やんわりと謝絶しているケースが散見されました。
また、同じ銀行でも都内の支店と地方の支店で対応が全く異なるケースも散見されました。「同じ銀行なのに、何故?」と感じた事が1度や2度ではありませんでした。

2011年の主なご相談内容
2011年に入ると、リスケジュール一辺倒だったご相談内容に変化が出てきました。すでにリスケジュールをされている方からのご相談を頂くようになりました。割合的には5名に1名ぐらいでしょうか、「すでにリスケジュールしているのですが…」というご相談が増え出したのはこの頃です。
すでにリスケジュールされている方からのご相談内容は、
- リスケジュールの更新契約ってできますか?
- リスケジュールの更新は何回までできるのですか?
といった「リスケジュール契約の更新」に関するご相談が多かったです。
2012年の主なご相談内容
2012年に入ってからは、これからリスケジュールを考えているという方よりも、リスケジュール更新に関するご相談が目に見えて増えてきた時期でした。2人に1人の割合で「リスケジュールの更新って…。」というご相談がありました。
また、この頃になると、金利を払い続ける事に疑問を感じだした方や、リスケジュールによって資金調達ができなくなった企業から「新会社を設立して資金調達したい」というご相談を頂くようになってきました。
2013年の主なご相談内容
2013年の3月末に、金融円滑化法は期限を迎えて終了しましたが、金融庁から「円滑化法終了後も金融機関が引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべき」という要請が出たこともあり、リスケジュールしやすい状況が続きました。
この頃のご相談内容は相変わらず、2人に1人の割合で「リスケジュールの更新は…」というご相談を頂きましたが、負債を処理したいと考える方のニーズが前年と比較すると目立つようになってきました。
「負債を処理したい」とお考えの方からヒアリングすると、「リスケジュールしてしまうと借りれないのに、既借入金の金利を払い続ける事になるので、この状態が続くとジリ貧になってしまう。であれば、いっそのこと負債を処理したい」というご相談内容を頂くことがご相談者様の2割程度頂くようになりました。
2014年の主なご相談内容
2014年になると、負債を処理したいというニーズが前年比の倍ぐらいに増え、
- このまま何年も金利を払い続けるのは厳しい
- 営業利益が出ているのに、金利負担が重く、経常収支が赤字になる
- 代位弁済になるとどうなる
- 新会社を設立して事業譲渡したい
等というご相談が増えてきました。
ご相談者様に銀行取引に関するヒアリングを実施すると「2010年にリスケジュールしてもらった」「リスケジュール3年目」という事をよく聞くようになりました。
2014年は「経営者保証に関するガイドライン」が施行された年でもあります(2月1日から施行)。ちなみに、この年は経営者保証に関するガイドラインに関するご相談は殆どありませんでした。

2015年の主なご相談内容
2015年は2人に1人の割合で「負債を処理したい」というご相談を頂くことになりました。ご相談者様も「リスケジュール4年目です」「リスケジュール5年目です」という方が多かったです。
また、負債の処理と合わせて、「息子・娘に無借金の状態で事業を承継させたい」というご相談を頂くようになりました。件数は少ないですが、この年から徐々に増えるようになりました。
40~50代の方からご相談を頂くと、「息子・娘に…」というお話はほとんど出てこないのですが、60代後半~70代の経営者様からご相談を頂くと、「息子・娘に…」というご相談を頂くことが多かったです。
2016年の主なご相談内容
この年に入ってから、リスケジュール申請に関するご相談は10人に1人ぐらいの割合となり、また、単純に負債の処理をしたいというご相談が減少し、
- 第三者の連帯保証を外したい
- 第二会社で資金調達をしたい
- 息子・娘に無借金の状態で承継させたい
というご相談が増加してきました。
2016年あたりから、経営者保証に関するガイドラインの活用を前提としたご相談が増えてきました。
ただ、経営者保証に関するガイドラインが施行されてすでに2年近く経っているにも関わらず、銀行に打診しても現場の理解が追いついておらず、「第三者の連帯保証を外す事などできない」「上に確認してみないと分からない」等と言われるケースが散見されました(回答に2カ月程待ったケースもあります)。
ただ、近年は活用実績が増えつつありますので、現場の理解が追いついてきているような肌感覚があります。

2017年の主なご相談内容
2017年に入ってからは、「リスケジュールを申請したい」、「リスケジュールの更新が…」等といったご相談は殆ど目立たなくなり、ご相談案件の多くは「負債の処理と親族への事業承継をしたい」というケースが増加しました。
継がせたい親族がいない場合は、いったん収益事業を別法人に移転してしまい、法人と代表者の負債を整理したうえで、最終的に経営権を取り戻す。といった解決策をご提案するケースが増えてきました。

2018年の主なご相談内容
初めてリスケジュールされる方や、リスケジュールの更新は少数ですが、
- 負債を処理したい
- 新会社で資金調達したいという
- 経営と関係ない連帯保証人の保証を外したい
- 親族への事業承継を考えているけど、負の遺産までは承継させたくない
というご相談に来られるケースが一定の割合であります。
まとめ
年々、新しい枠組みや支援策が出てくるため、再生手法はより複雑になりつつあると実感します。
最近では、中小企業の支援体制を強化するような保証制度が色々と出てきてはいますが、冷静に見ると、融資先企業をより選別しようとしている動きが見て取れます。
ただ、テクノロジーの進化と共に新たな資金調達方法も増えてきていますので、数年前と比較すると、資金調達環境は良くなっているのではないか?とも思えます。


今後もご相談頂いた企業のお役に立てるよう、常にアンテナを立て、日々研鑽していきたいと思います。