資金繰りが厳しくなると考えが後ろ向きになりがちです。何年も続けてきた事業があと数か月後に「倒産」という事態が現実味を帯びてくるとなおさらです。先日お会いした方も、後ろ向きの考えになっていました。
実務家の意見を聞きたいとご相談に来られた
私に会う前に、「知人に紹介された弁護士に相談した」とその方はおっしゃっていましたが、代表者は破産して、会社は親族に承継させる。そうすればソフトランディングできる。
というようなアドバイスを受けたようですが、「破産」という二文字がどうにも重くのしかかったようで、ひとまず、法的な観点から考えない、私のような実務家の意見も聞いてみたいという事でご連絡頂きました。
お会いして、ヒアリングしていた時は、

受注もどんどん減ってるから破産してもいいかな~なんて思ってます。
まあ、担保に入っている親族の家だけ守れれば、あとは別にいいかな~。
一応、窮境状態をみかねた取引先が「仕事を回してあげるからもうちょっと頑張ってみなさい」と言ってくれたのですが、頑張ると言ってもこの業界もだんだん厳しくなってきたし、やっぱりこの辺りでスッキリした方が良いですかね~。
というような感じで、後ろ向きなことばかり言ってました。
まあ、そう思う気持ちも分かるんですけどね。
本当は「事業を続けたい」と考えている場合が殆ど
ただ、最初から諦めているような方が私に相談するという事は考え難いので、本当は続けたいのだろうなと思いました。
ご相談者様の本音を聞き出すために、破産する必要性が全く無い事を伝え(全ての保全が済んでからでも破産するのは遅くないという説明です)、今後起こりうる事を全てご説明した後に、改めてご相談者様の本当の気持ちを聞いてみました。



社長は本当にそれでいいのですか?
同業から仕事の話が来ているなら、ほんとうは仕事を続けたいんじゃないですか?それとも、もう隠居されるのですか?



う~ん。続けたくないと言う事は無いです。
本音を言えば、もうちょっと続けたいです。
ただ、続けたいのはやまやまですが、破産しても良いかなという考えも頭の片隅に残ってます。
どうしたらよいのか、自分でも答えを出せないでいます。ただ、やれる事はまだまだありそうな気がしてきました。
やはり、本音は続けたいのだなと思いました。
この後もいろんなお話を伺う事ができ、面談が終わる頃には



今まで誰にも相談した事が無いので、なんだかスッキリしました。
ひとまず視野が広がったので、また違う方の意見も聞いてみます。その上で、改めてご連絡します。
と言って、ご相談者様は帰っていきました。
情報や知識はもちろん大事ですが、気持ちの切り替えも大事です。
いろんな方の意見を聞かれるのはすごく良い事なので、どんどん相談した方がよいのですが、一つだけ足りないものがあると感じました。情報や知識を得るのは非常に大事なのですが、それ以上に大事なのが気持ちの切り替えです。
事業再生は再生スキーム云々というより、経営者の感情によって結果の良し悪しが左右される事が多いです。一見すると、スキームが優れていれば再生できると思われがちですが、精神的なウエイトが非常に大きいのです。
例えば、著名な先生がどんなに素晴らしい再生スキームを考えても、経営者の方の気持ちが折れてしまい、実行できなければ絵に描いた餅で終わります。考え方を明るく前向きに切り替える事が何より大事なのです。
たとえ、前向きになる根拠が全く無かったとしても「とりえあえず、何とかなるだろうから、やれるところまで踏ん張ってみよう」という気概が非常に重要なのです。
イレギュラーな事態を乗り越えるためにも気持ちの切り替えは必要
なぜそこまで気概が大事なのかと言いますと、再生に向けて動き出した後に響くからです。
そもそも、事業再生はスキーム通り事が運ばないなんてしょっちゅうです。何かしらイレギュラーな事態が起こりますし、その都度、対応に追われたりする事が殆どです。
そのため、「どれだけリカバリーできるか」という事にかかっていたりするのですが、気持ちの切り替えがきちんとできていないと、イレギュラーな事態が起こるたびに、「やっぱりダメかもしれない」と気持ちが折れてしまい、リカバリーしようとする気力が無くなってしまうのです。
気持ちを明るく前向きに切り替え、イレギュラーな事があっても気にせず、「まあ、なんとかなるさ」と気楽に構えているのも非常に重要なのです。
「適当」とまでは言いませんが、厳しい局面だからこそ楽観的に構え、何か問題が発生しても受け流せるぐらいの心構えでいれば、きっと良い結果を出せるのではないかなと思う次第です。