ABL(売掛金担保融資)による資金調達を徹底解説!業種やメリット・デメリット、条件など【保存版】

商品を販売して実際に入金されるまで入金を待ち続けるのは、資金繰りが苦しい企業にとってかなり苦しいものです。「支払いサイトが60日から、30日になってくれたら…」等と考えた事があるのは、1度や2度ではないはずです。

しかしイザ、取引先に打診してみても、「ウチも苦しいから支払いサイトを短くできない。逆に60日から90日に延ばしてくれ」なんて言われる始末。

リスケジュールしても資金繰りがまわるのであれば問題ありませんが、どうしても資金が必要になる時もあります。

そのような時、売掛金を担保にして資金を調達します。

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売掛金を担保に資金調達する「売掛金担保融資」とは

売掛金担保融資とは、取引先にある売掛金を担保にして融資を受ける方法です。

担保になる売掛金の種類は下記のとおりです。

  • 売掛金債権
  • 運送料債権
  • 工事請負代金
  • 診療報酬債権
  • 割賦販売代金

実際にどれぐらい融資を受ける事ができるの?

一般的に、売掛金担保融資の担保割合はおおむね70~100%ぐらいとなっています。

例えば、1,000万円の売掛金がある場合、売掛先の信用状態にもよりますが、概ね700万円~1,000万円ぐらいの融資を受ける事が可能です。

在庫担保融資の30%と比べたら雲泥の差があります。

しかし、これは、あくまで一般的な説明です。実際は70%以下になってしまう場合が多いです。

ですから、「売掛金の7割以上は絶対に借りれる」と思い込むのは危険です。「売掛金の5割以上借りれたら御の字」ぐらいに思っておいたほうが無難です。

実際に融資を受ける段階で、自分の頭の中では「売掛金の7割以上は借りれる!」と思い込み、嬉々として審査を受けたら「担保の掛け目は50%です」なんて言われたらショックだと思いますので、資金計画に余裕を持たせるためにも、6~7割以上借りれたら御の字ぐらいに考えておいた方が良いです。

どこで申し込めばいいの?

在庫担保融資と同じく、信用保証協会で取り扱っています。

ただ、在庫担保融資と同じように使い勝手の悪さは否めません。

中小企業庁のホームページに「売掛債権担保融資保証制度 活用事例集」というページがあります。

参考リンク売掛債権担保融資保証制度 活用事例集

こちらを読む限りでは、使い勝手がよさそうに見えるのですが、実際に申し込んでみると正直まだまだ使い勝手が良くないと思います。

信用保証協会の売掛債権担保融資は、2000万ぐらいの継続的な取引で発生する売掛金に対して、決められた掛け目をかけて、1,000~1,400万円の金額を融資する。というような方法ではなく、取引先との取引で売掛金が発生し、その売掛金を担保に融資を受け、そしてその売掛金が回収となったら、その回収金を弁済に充当する。という方法を採用しています。

ですから、手形割引のような短期資金しか調達できないので、あまり使い勝手はよくないかもしれません。

ただ、短期的な資金ショートを回避するために利用するのなら、かなり使えるとは思います。若干金利も高いですが、短期の利用ですので、そこまで負担にならないかと思います。上記の説明でピンときたと思いますが、長期的な利用には不向きです。

在庫担保融資と同様、ここでも信用保証協会から紹介しましたが、やはり、審査に時間がかかってしまうのが難点です。

説明するまでもありませんが、実際に融資を実行するのは銀行です。在庫担保融資に比べたら、積極的な融資姿勢と言えますが、まだまだ、若干及び腰のような印象を受けます。

個人的な意見ですが、地方だとその傾向が特に強いように感じます。ですから、実際に利用するとなるとノンバンクになると思われます(一応、信用保証協会から攻めてみて下さいね。そこで、感触をつかんでみて下さい)。

売掛金担保融資を利用するための条件3つ

売掛金担保融資を利用するには条件が下記3つあります。

  • 売掛先と債権譲渡禁止条約を締結していない
  • 売掛先が法人である
  • 継続的に取引している企業である

上記のとおりです。

売掛先と債権譲渡禁止条約を締結していない

「債権譲渡禁止」というのは、分かりやすく言いますと、「売掛金は、あなた以外の第三者に渡さないですよ」という契約です。債権譲渡禁止条約を取引先と結んでいたら使えません。

しかし、取引先と何の契約も結んでいなければ大丈夫です。

売掛先が法人である

個人で事業を営んでいる方の売掛金は担保にできません。

継続的に取引している企業である

単発の取引で発生した売掛金は、担保になりません。

継続的に取引している企業が相手だと、問題ありません。

売掛金を担保にしているという事実を第三者に知られる?

売掛金を担保にするいうと、「取引先に知られてしまうという話を聞いた事がある。もしそうなってしまうと、「あの会社はヤバイ」と取引先に警戒されてしまうのではないか?」という心配をされる方が出てきますが、大丈夫です。

結構誤解している人が多いのですが、必ずしも取引先に知られてしまうという事はありません。取引先に知られる事なく、売掛金担保融資を利用する事はできます。

「取引先に知られてしまう」と誤解している方は、①売掛先の取引先へ売掛債権の譲渡に関して承諾を得て、②売掛先のある取引先へ売掛債権を譲渡した事を通知する。という流れを想定しているのだと思います。

この方法だと、確かに相手に知られてしまう事になります。

しかし、法務局へ行き、金融機関へ売掛債権を譲渡した事を債権譲渡登記事項概要ファイルへ記録する。という方法を採用すると、取引先に知られる事はありません。

これは債権譲渡登記事項概要ファイルへ記録する方法なので商業登記簿へは記録される事はありません。

第三者に商業登記簿を見られても大丈夫です!

売掛金担保融資を利用しても、約定どおりに返済をしている限り、取引先へ通知が行く事はありません。

金融機関が「取引先への通知が必要」と判断した場合は取引先へ通知される場合があります。これは金融機関によって異なりますので、最初の段階で確認しておいた方が良いです。

ABL(売掛金担保融資)を利用する際はリスケジュール後に!

銀行から融資を受ける事ができるに越した事はありませんが、リスケジュール前にABLで資金調達してしまうと、ABLで調達したお金で銀行へ返済してしまう事になりかねません。

ですから、リスケジュール後にABLを申し込まれることをおすすめします。

リスケジュール中でも売掛金担保は使えるの?

「売掛金担保融資はリスケジュール中でも使えるのですか?」という質問をよくいただきますが、結論から言うと、売掛金担保融資はリスケジュール中であっても大丈夫です。

売掛金担保融資を扱っている金融業者さんの担当の方と情報交換をしますが、「リスケジュール中の企業はNGです」等と言われた事は一度もありません。

よく言われるのは「銀行借入はリスケジュールしていて、これ以上銀行から資金調達するのが難しいというお客様をご紹介して下さい」というお話を頂くことばかりです。ですから、リスケジュール中の企業はNGという事はまずあり得ません。

そもそも、約定弁済中に売掛金を担保に融資を受けても、あまり意味がありませんから止めた方が良いです。

約定弁済中に売掛金担保融資を受けても意味がない理由

なぜ、リスケジュール中に売掛金担保で資金調達するのを止めた方が良いのか、簡単な例を出します。

例えば、約定弁済中に、売掛金担保融資を実行したとします。

融資が実行されれば口座に資金が振り込まれる訳ですが、約定弁済を続けていたら、売掛金を担保に入れて融資を受けたリスクの高い貴重な資金が、リスクの低い銀行融資の返済に充当されてしまうという状況が起こってしまいます。

売掛金担保融資で借りたお金を返済できれば問題ありませんが、仮に、売掛金担保融資の返済が滞ってしまった場合、金融業者に担保設定された売掛金を取引先に回収されてしまいます。

さて、金融業者が売掛金を回収に来て、取引先が良い顔をしてくれるでしょうか。

いくら付き合いが長くてもなかなか厳しいところがありますよね。

取引先が大手企業なら「御社とはこれ以上お取引はできません」と言われ、即座に取引停止となります。

そうなると、せっかくリスクが高いお金に手を出したにもかかわらず、倒産リスクだけが上がってしまう事になってしまいます。

銀行融資の返済が遅れたところでダメージを受ける事はない

でも、銀行融資の返済が遅れたからといって、このような事になると思いますでしょうか?答えは簡単、このような事態にはなりませんよね。

借入金の返済が多少遅れたぐらいで売掛金を差押えられたり、返済が遅れただけで一括弁済された等という話は聞いた事がありません。

このような事情を踏まえた上で結論を出すと、「売掛金担保融資を検討する際はリスケジュール中が良い」という事になります。

売掛金担保融資で好まれる業種2つ

売掛金担保融資で好まれる業種は2つあります。

  • 製造業(食品製造が特に好まれる傾向有)
  • 運送業

上記の業種は売掛金担保融資を実行しやすいので、金融機関に好まれます。

売掛金担保融資が難しい業種3つ

売掛金担保融資が難しい業種は3つあります。

  • 建築・建設業
  • IT業
  • 飲食・小売業

上記のとおりです。

建築・建設業は売掛金担保融資が難しい

どこの金融業者でも共通しているのですが、資金ニーズのあるお客様の業種は?と聞かれた際に「建設関係」「建築関係」と答えると、難色を示される場合が殆どです。

全ての金融業者が断るという事ではありませんが、「ウチは建設・建築業でもOKです」という金融業者もあります。

建設・建築業へ融資を検討する際の条件

建設・建築業へ融資を検討する際、共通の条件があります。

それは、売掛金の入金サイトが「30日無いと厳しい」という条件です。

  • 月末締めの翌月末払い → 検討の対象となる
  • 月末締めの翌月20日払い → 入金サイトが短いからNG

という条件になる事が殆どです。

IT業は売掛金担保融資が難しい

売掛債権担保融資で敬遠されるもう一つの業種はIT関係です。

一口にITと言っても様々な業態があると思いますが、システム開発の受託等がこれに当たります。

なぜ、IT関係(システム開発の受託等)が敬遠されるのかと言いますと、プロジェクト開始時に着手金や進捗度合いでの請求を求める場合があるからです。

例えば、1,000万円のシステム開発案件があったとします。

そのような場合、契約時に2~3割程度の着手金を受け取る事が多いです。

仮に、300万円の着手金を受け取った場合、残金700万円が売掛金として発生するのですが、プログラムを納入・検証した段階で全体の3~4割の入金があったりします。

この時点で300万円を受け取った場合、売掛金として残るのは400万円になります。

このように、仕事の進捗と共に売掛金が減っていくような業種は、金融機関からしたら「売掛金として見る事ができない」という事になりますので、このような業種は違う方法で資金調達を図る必要が出てきます。

飲食・小売業は売掛金担保融資が難しい

どこの金融業者さんに相談しても、飲食・小売業(EC事業者含む)の方は入口の段階で断られる場合が殆どです。飲食・小売業はそもそも現金商売です。

カード決済による売掛は売掛債権とみなされない

カード決済に対応している飲食・小売業の方から「カード決済による売上は売掛という扱いになりませんか?」というご質問を頂きますが、どこの金融業者さんに聞いても、「売掛という扱いにはなりません」という回答が返ってきます。

カード決済による売掛が売上の多くを占めている事業者さんは取引データを担保に融資をする「トランザクションレンディング」を検討されると良いかと思います。

トランザクションレンディングの詳しい解説は以下の記事を参考にして下さい。

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税金を滞納していてもABL(売掛金担保融資)で資金調達できる?

ABL(売掛金担保融資)を検討する際、税金の滞納に気を付けなければなりません。

なぜなら、税金の滞納があると調達可能額が減ってしまうからです。

税金滞納が原因で最初から断られるという事は殆どありません。

どれぐらい調達額が減ってしまうのか

例えば、ABLを検討する際、次のような状態だったとします。

  • 売掛金:1,000万円
  • 税金滞納:200万円

この状態でABLを申込み、審査をしてもらったところ、1,000万円の売掛金を担保に600万円の評価が出ました。

税金の滞納が無ければ600万円調達する事ができるのですが、税金滞納があると滞納分を控除された金額しか調達できなくなるのです。

この例で言いますと、

  • 評価額(600万円)-滞納額(200万円)=融資実行額(400万円)

という事になります。

税金の滞納額が大きいと融資不可となる場合が少なくない

上記の例から分かる通り、税金滞納があると売掛金の評価額から滞納額を差し引いて融資可能額を算出するため、滞納額が大きいと実行不可能となる事が殆どです。

上記の例で、600万円の評価に対し、600万円の税金滞納があるような場合は、差し引きゼロとなりますから、融資はNGとなる場合が殆どです。

なぜ、税金滞納があると調達額が減ってしまうのか?

税金滞納があると税務署による差押えリスクが出てきます。

融資を実行する側である金融機関からしたら、債権回収ができなくなるリスクが高まりますので税金を滞納している場合はその分担保余力が低下してしまうのです。

リスケジュールの実行と同時に売掛債権担保融資を検討するケースが多いですが、税金滞納があると調達が難しくなるので、この点気をつける必要があります。

税金滞納を解消するために融資実行する金融機関もある。

滞納の程度にもよりますが、滞納を解消するために売掛金担保融資を実行する金融機関もあります。

ですからもし、「リスケジュール中だけど税金滞納分を資金調達して一括で納めたい」という事をお考えであれば、検討してみるのも良いかと思います。

売掛金担保融資がマッチしないケース3つ

売掛金担保融資がマッチしないケースは下記3つあります。

  • 相手先に通知するという悪条件を提示される
  • 調達可能額が極端に少ない
  • ○日までに必要なのに、必要日の1~2週間後ならOKという条件を提示される

上記のとおりです。

相手先に通知するという悪条件を提示される

金融業者のWebサイトに「当社の売掛金担保融資は取引先の通知はしません」という記載があるので審査して貰ったところ、「希望金額の3分の2までなら実行可能です。ただし相手先の了承を得ないと実行できません」という回答がくる事があります。

借りる側である企業からしたら「取引先に通知が行かないと言っていたから申し込んだのに…」となり、最終的には「取引先に知られてしまうなら止める」といって売掛金担保融資での調達を止める場合があります。

調達可能額が極端に少ない

希望している調達額と、融資可能額の乖離が極端に大きいと、融資を申し込んだ企業からしたら「それぐらいなら焼け石に水だから、借りない方が良い」という結論になる場合があります。

○日までに必要なのに、必要日の1~2週間後ならOKという条件を提示される

借り手企業が「○日までに資金が必要だから、それまでに実行して欲しい」と伝えても、「○日まで資金が必要との事ですが、その日を1週間過ぎた後であれば、希望額の半分は融資できます」等と言われるケースがよくあります。

借り手企業からすると、「○日を過ぎるなら、足りない分は結局、取引先に支払い猶予のお願いに回る事になるから、それだったらそもそもその金は必要無い」というのはよくあるケースです。

このように、貸し手・借り手双方に需要がありながらも、なかなかマッチしないという事はよくあります。

まとめ

以上、ABL(売掛金担保融資)による資金調達方法を、資金調達可能な業種やNG業種、利用のメリット・デメリットを解説しました。

売掛金担保融資は銀行融資が難しい企業でも売掛金があれば調達できる可能性があります。

ただし、万が一、返済が遅れてしまった場合、金融機関は取引先から売掛金を回収することになるため、取引停止のリスクがでてきます。

取引先が大手企業の場合、取引停止は避けられませんので、利用を視野に入れている場合、慎重に検討するようにしましょう。

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